映画:ミケランジェロの暗号(監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー)


映画館は年配の方でいっぱいだった。どんな映画なのかよく調べもせずに観に行って、始まる前に『ダ・ヴィンチ・コード』みたいな話なんじゃないのなんて言ってたのだが、全然違った。
ナチスの輸送機がパルチザンの攻撃で墜落する。そこで辛くも生き残ったユダヤ人捕虜とSS将校。実はこのふたりは幼馴染なのだった。
ウィーンで裕福な画商一家のユダヤ人家族の息子と、その使用人だが家族同然に暮らしていたアーリア系の母子。それぞれ息子同士で親友で幼馴染だったふたりはひとりの女性の歓心を奪い合い、負けた使用人の息子ルディは画商の息子ヴィクトルに立場の違いやら女の恨みやらで密かにコンプレックスを抱いていた。そこで家族を裏切って画商が隠し持っていたミケランジェロの絵のありかをナチスに垂れ込み、自分は将校に取り立ててもらうのだが、しかし根っからの悪人にもなりきれず、家族に警告を発し取引に応じればスイスに逃がしてやる約束をする。が、1枚も2枚も上手の上司に手もなく転がされてしまい、家族は引き離されそれぞれ別の収容所に送られてしまうのが、間抜けというか悪い意味で可哀相な男である。
しかし転んでもただでは起きないというか、ただでは転ばないというのか、画商の父は家族に黙って2枚の贋作を作らせ、その1枚をナチスに掴ませていた。月日が経ち贋物だとバレると今度は本物はどこだということになるのだが、秘密を持ったまま父親は既に獄死していたのである。息子に「自分を常に視界に置け」という謎の言葉を残して。その意味は息子にもさっぱり判らないのだった。
ひとの思惑が入り乱れ、激動に時代の波に翻弄されつつ予想が図に当たったり外れたり、飛行機が墜落したりなりゆきに合わせて嘘をついたりうまく立ち回ったりの丁々発止のやりとりが続く。しかし情も捨てきれず、どこか滑稽で人間臭さを残した匙加減が絶妙であった。
最後にヴィクトルがバチンとウィンクするのが妙にキマっていたな。ウィンクって最近はあんまり見ないけど、こういう映画にはよく似合う。