大雪


雪らしい雪である。こっちの方では珍しく積もった。強風も吹き荒れて爆弾低気圧だったのかな。成人式のひとは大変だっただろうが、休みの日でよかったなぁ。明けて今朝は道が凍りつき、歩幅を狭くちょこちょこと跳ねるように歩く雪道仕様で小走り。沈む前に踏み出せば水の上も歩けるように、滑る前に次の一歩に移行して前進するのである。アイスバーンではゆっくり歩く方が難しい。
しかし本降りの日が休みでよかったとはいえ雪の残った次の日は予定通り現場で仕事なわけで、長袖のヒートテックに分厚いタイツを装着して挑んだものの、やっぱり寒いものは寒く一日外にいたら凍えた。そうして冷え切った身体で急に暖かい車内に入ると、風呂で眠くなるのと似たような感じで気が遠くなる。原理は同じであろうし、やっぱり半分気を失ってるんじゃなかろうか。会社まで白目をむいて眠いのを我慢するひとときが地獄である。
戻ったら戻ったでもう仕事をする気力など残っていない。しらばっくれてさっさと帰ることにしよう。しかし意外に雪が消えなかったな。案外気温が低いらしい。


夜、冷え切った身体を湯船に沈め熱い快楽にため息をつく。冷えたからこその気持ちよさ。ふり幅の大きい労働者の悦びである。ふといつまでこんなことやってるのかなという思いが掠める。いつまで、といえば、出来るならば定年まで働くんだろう。技術者であることに否やはない、むしろ自ら選んだ職である。地味でキツくて世間的には華やかさのない仕事だが、やってみれば面白いし向いていると思う。確かに働かなくて済めばそれに越したことはないし、特に拘束時間についてはもうちっとゆるくてもまったく構わないが、そういう業界である以上は言っても詮無いことである。他に何を求めているわけでもなく、人生は暇潰しだとすればそう悪くない。このご時勢では仕事があるだけ有難いのだ。
しかしいつまで、という気分がすっと出てくるのは、若い頃に頑張ればどんどん上っていける好景気を経験しているせいなのかとちょっと可笑しくなった。バブルが弾けたのは学生のときだったけど、それでも苦労すればするほど大きな実がなる空気を肌で感じて育ったからそういう思考になっているのか。現実的な見通しではこの先もそう変わらない。やらなくて済む人は始めからやってないし、働かねば喰えない人間は働くのだ。年齢は関係ない。
さばりと勢いよく湯から出た。