映画:ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!(監督:エドガー・ライト)


街にある12軒のパブをすべて回る飲酒マラソン“ゴールデン・マイル”。その終点がワールズ・エンドというパブなのである。UKロック最盛期のころ、高校を卒業したばかりの5人組はゴールデン・マイルに挑戦するが、5軒目くらいから脱落者が出はじめ、8軒目で全員が限界を迎えて挫折する。それから20年、5人組のリーダー格だったゲイリー・キングが高校時代の友人を無理矢理集め、もう一度ゴールデン・マイルに挑戦すると言い張るのである。
あれこれオマージュがあってたぶん全部は判ってない。いちいち小ネタになっているのでずっとニヤニヤしっぱなしのコメディである。しかし話の内容そのものはけっこう重くて、アル中治療中に大酒を飲む計画を立てるということ自体が推して知るべしである。高校時代が人生の頂点だったゲイリーは、最後にそのころを再現して有終の美(各店のゲストビールの銘柄でもある)を飾りたかったんだろう。
それにしても今回のニック・フロストは非常にかっこいいデブであった。ポスターでもいい顔だ。こちらは自主的に禁酒していて、パブ巡りでも最初は水しか頼まない。そのことで口論になったときの、スポーツジムの帰りにバーに寄ってムキムキ荒くれ者に囲まれながら水を注文するのは勇気がいるんだぜ、という話は、エピローグに重なるのかな。
流れで禁酒しなきゃなどと思っているうちは、世界はなんて品行方正でつまらないんだろう。逆に生きるために戦いだすと、途端に同じ場所がエキサイティングなサバイバルの戦場と化す。ぜんぶゲイリーの心象風景だったりしてな。と思いつつ、観終わった後はもちろんパブに行ってエールをパイントで飲んだ。