山姥志望

仙人のような生活がしたい。悠々と好きなことを好きなだけしながら、霞を食って生きていきたいのである。出来るかどうかは別として、夢見るだけならタダだ。
私は喰意地がはっている。美味しいものが大好きだし酒も好きだ。見た目もキレイな料理が好きだし、量も食べるほうである。その点だけでもう仙人にはなれない。しかしそんな私でも寄る年波でだんだん食べられなくなってきたのだから、いい加減に不味いものやその時食べたいわけでもないものは口にしないくらいの分別は持ちたいものである。あと、苦しくなるほど腹いっぱいにしない。野蛮にも満足感を量で得るのではなく、料理は美しく美味しく作り、目と舌で堪能する方向へ文明化したいものである。仙人への道も一歩から。だいぶ遠いスタートラインではある。
貧乏生活は既に体験したからもういいや。不労所得が得られるまでは仕事はしといたほうが精神衛生上宜しい。それに満足のいく清貧な生活というのは金がかかるものだ。
道具を揃えてゆるゆると手の向くまま作ったり修理したり磨いたり絵を描いたりしていたい。外に出るのはたまにでいい。強い刺激も季節ごとに一度程度なら面白いが、それ以上は咀嚼できず、消化不良で苦しくなるだけだ。他人から見たら何が楽しいか判らないような暮らし。自分の中だけで完結して満ち足りていればいい。昔から親には「そんなに自分勝手にしたいなら、山奥でひとりで暮らしなさい!」と叱られたものだが、割とそれもいいなと思う今日この頃である。早死にしなければ老後はしばらくひとりだろうし、そんな山姥になるのも悪くない。