井の中

自己の存在意義を疑うほど追い詰められる日々を送っている。タスクは潰しても潰しても無限にどこからともなく湧いて出て、コロコロと手足を丸めた甲虫のように机の上を転がっていく。逃げ回るそれをひとつひとつ捕まえては潰して伸ばし、四角の書類の形に整える。ひとつで足りなければいくつも継ぎ足した。不安定に転がるタスクは驚くほど内容が薄く、表面の殻が硬くて潰すのに苦労するものほど伸ばしたときにはたいした面積にはならない。1枚の書類の体裁を整えるのに十ものタスクが必要になることもあった。捕まえて潰して伸ばす作業をひとつずるやるのが厭になり、並べて一時に潰してみようとしたこともあったが、それぞれの硬さが違って強く叩きすぎると砕け散ってしまったり、弱ければ当然潰れないものが出てきたりした上にそれぞれがバラバラに逃げ出すので、飛び散った破片や蠢くものが入り混じってしまいには机の上の収拾がつかなくなり、地道にひとつひとつ潰していくのが結局のところ確実なのだった。それからというもの、諦念にも似た心持で億劫な気持ちを噛み殺し、バカのように捕まえては潰し、潰しては引き伸ばし、引き伸ばしては形を整えたものを積み重ね、積み重ねたものをひとまとめに括ってまたそれを積むことを繰り返した。座り込んだ周りに高く積み上がったブロックは壁になり、座っているとまるで井戸の底にいるようだった。そうだ、私はせっせと井戸を作っていたのだった。井戸の底にはタスクが湧く。不思議なことにタスクというのは壁が高くなればなるほどその内側に引き寄せられるようで、だんだん数が増えてきているようだ。いつか湧いてくるのに潰しては伸ばし整え重ね括り積むのが追い付かなくなったら、タスクに溺れて自分で作った井戸の底に沈むのだろう。
それはそうと、会社から賞状を貰った。