読了:エルリック「スクレイリングの樹」(マイクル・ムアコック)

スクレイリングの樹―永遠の戦士エルリック〈6〉 (ハヤカワ文庫SF)

スクレイリングの樹―永遠の戦士エルリック〈6〉 (ハヤカワ文庫SF)

主人公を三人配し、章ごとに視点を変えて三方向からひとつの顛末が描かれている。舞台はコロンブス以前の北米大陸らしく、これが物珍しくて趣を添える。
哲学的というか煙にまかれるような世迷言がうだうだ続くのにはちと参ったのだけど、これがムアコック節といえばムアコック節。それにしてもまた一段と磨きがかかってるような。しかし読んでいるうちにさーっぱり判らんっと投げそうなった途端に、作中のウルリックも「私の頭脳では理解できない」と独白するというタイミングの良さ。そうか、これは雰囲気作りの小道具みたいなもんで、物語上は理解する必要はないのだな、と気を取り直して読み進めた。
そこらへんをのみ込めば、白子三人集まって文殊の知恵というか、肝心カナメはメルニボネでお馴染みの竜であったり、パーツを集めて不思議な力を顕現するといういかにもなお約束っぽさというかがあったり、面白おかしい判りやすさであった。
最後らへんのアレはくるぞくるぞと身構えて、ああ〜やっぱり‥‥という展開のカタストロフとそのオチを含めて、シリーズの穴を埋める巻だったのかな。しかし鶏アタマの私が前に読んだのがもう十年以上も前のことだし、細かい設定はおろかストーリーすらロクに覚えていないので、ニレインとかジャクリーン・ラーンとかのなんとなく見覚えのある固有名詞から、そうであろうと想像するだけだが。エターナルチャンピオンを全部読み返さないとよく判らない巻だったかもしれない。