読了:李陵・山月記(中島敦)

李陵・山月記 (新潮文庫)

李陵・山月記 (新潮文庫)

表題の「李陵」「山月記」の他に弓の名手・紀昌の修行の果てを描いた「名人伝」と孔子の弟子・子路の話「弟子」が収められている。
こんなに短い文章だったのか。古文のように、簡潔で含蓄の深い言葉が並べられていて、枚数相応に内容が薄いようには感じられない。
山月記はそうでもないが、弟子と李陵は漢文からの引用や語句が多くて、巻末の注解と首っ引きであった。
こういう本を読むと、どうも簡単には感想が出てこない。装飾は少ないのだけど、確かに美しい。むしろ子路や李陵の心の動きを表す様は、その苦渋や血気盛んな可笑しみのなかにまざまざとした美しさがあって、おいそれと言及できないのだ。
ただそれはそれだけのもの。それ以上でもそれ以下でもない。中島敦を読むたびに、そんな気分になる。