DVD:ジャンヌ・ダルク(監督:リュック・ベッソン)

ジャンヌ・ダルク [DVD]

ジャンヌ・ダルク [DVD]

歴史モノと思って見始めたら、妙におどろおどろしいホラーみたいな撮り方で面食らった。
目を見開き過呼吸気味で、顎を上げて苦しそうに声を絞り出すミラ・ジョヴォヴィッチがコワイ。そんで言うことが「か、神が‥‥わ、私は‥‥! 私は天上の王の御言葉をお伝えに‥‥!」とかなので、間違いなく怪デンパを受信しているアブないおねーちゃんである。いや、実際のジャンヌもそうだったのかも知れんが。王太子シャルルもたじたじである。まあ、実際そうだったのかも知れんが。そんで迷う王太子を好いように言い包め、聖油もあっさり補充してみせる実際家のヨランド・タラゴンが一番コワイ。いや、まあ、実際そうだったのかも知れんがな!
冒頭の傭兵のトチ狂った粗暴な振る舞いだとか、血飛沫ギトギト切り株だらけの戦場描写も、それにビビり矢を受けて泣き出すジャンヌはなんだかんだ言っても十代の少女なんだしというのも、陰謀渦巻く保身に長けた人々の群像も、たぶんそうであったろうなと思わせる現実味がある。リアリティがあると感じはしたが、実のところ細かい時代考証的なことは私自身がよく判ってない。あ、でもオレルアンの包囲網が解けたとこのくだりは、ちょっと消化不良だったな。
最初のおどろおどろしい描写は最後になって生きてくる。ずいぶん現代的な解釈を入れていて、このへんは完全にリュック・ベッソン流の創作であろう。しかしそうでもしないと『ジャンヌ・ダルクという事象』は映画にならないのかもしれない。ジャンヌという女の子は多少デンパが入っていたとはいえ、大人の事情に利用され田舎娘にしては次々と随分な目に遭わされて、最後は未必の故意で自滅させられるというキツい人生だったよな。相手がヨランドなんて女傑じゃ、勝ち目がない。その生涯が短かったのがまだしもの救いだったんじゃないか。そう思わせるのが悲劇のヒロインたる所以でもあろうが。
青ひげのモデルとされる色男ジル・ド・レももちろん出てくるが、ジャンヌと共に戦っている頃の彼はまだまともだった。残虐行為にはしるようになったのは、戦争が終結し領地に戻ってからなのだという。実はジャンヌが火刑になったことで、精神を病んだんじゃないかとも言われているらしい。とwikiに書いてあった。
そういやリュック・ベッソンミラ・ジョヴォヴィッチといえば、フィフス・エレメントもそうだっけ。あれもジョヴォヴィッチは変な天然少女役だったなー。