ギックリ背中

また背中がつった。軽いギックリ腰のようになるので厄介である。なんでつるのかなぁ。バナナ喰えってことか、と去年の今頃にも思った気がする。なんの因果か春になるとつる背中。前世の報いとかじゃないだろうな。
春はホラーにふさわしい。桜がなんとなく猟奇的なイメージがあるのは梶井基次郎より坂口安吾のせいだろうか。満開の桜の森。一度見たことがある。松島の近くにある山の中腹に、桜畑なのかと思うほど桜ばかりが植わっている斜面があった。重たげにたわわに咲いた桜の枝よりも、黒っぽく湿った土の上に敷き詰められた花びらのほうが気になった。うつむいて下ばかり見ている。薄い花の色を通して日が差し込むせいで、頭上はおかしな具合に明るい。黒っぽい地面と幹と枝。
桜の花自体は薄いピンクという寝ぼけた色なのに、何故あんなに美しく見えるのかというと、樹皮の色が濃いからなのだそうだ。深いこげ茶色と比して薄い色の花が引き立つ。その対比が見る者にインパクトを与えるわけだ。なんとなく幸薄そうな儚い印象になるのは、色のせいなのかもしれない。
そんな桜の森は穴場でもなんでもなく、赤ら顔した善男善女が大勢酒盛りしてたんだけどな。実際の木の下は静謐に死体が埋まってるより、酒臭くてうるさくて焼き鳥の串が落ちてるのが相場である。まったく背中が痛いのでヤサグレているのである。ちぇ。