時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ [DVD]

時計じかけのオレンジ [DVD]

喧嘩、盗み、歌、タップ・ダンス、暴力。山高帽とエドワード7世風のファッションに身を包んだ、反逆児アレックス(マルコム・マクドウェル)には、独特な楽しみ方がある。それは他人の悲劇を楽しむ方法である。アンソニー・バージェスの小説を元に、異常なほど残忍なアレックスから洗脳され模範市民のアレックスへ、そして再び残忍な性格に戻っていく彼を、スタンリー・キューブリックが近未来バージョンの映画に仕上げた。忘れられないイメージ、飛び上がらせる旋律、アレックスとその仲間の魅惑的な言葉の数々。キューブリックは世にもショッキングな物語を映像化した。当時、議論の的になったこの作品は、ニューヨーク映画批評家協会賞の最優秀作品賞と監督賞を受賞し、アカデミーでは作品賞を含む4部門にノミネートされた。現在でも『時計じかけのオレンジ』のその芸術的な衝撃と誘惑は観る人々を圧倒する。

再見である。自宅のパソコンでgyaoを観られるようにあちこちアップデートしたり、サイトのいうとおりに細々した条件を満たしたりしてたんだが、そのときにたまたまこれが配信されていたんである。験しに再生してみたら、さすがキューブリックで途中で止められず一本観てしまった。
前に観たのはずいぶん前だが、市営住宅の内装が市松模様だとかイチモツ型の芸術作品を猫女が妙に大事にしてるとか、変なところは良く憶えていた。若いころにはよく判らなかったストーリーも、いま見るとなるほどなぁという感じで、我ながら少しは成長してるのかと可笑しくなった。
大人の事情で尊厳を超えて運命を左右されるチンピラだけども、正直なところいいんじゃねぇか、と思ってしまう。因果ってのは人智を超えたもので、人間様が勝手に何を守り何を犯さざる領域だと決めたところで逸脱は出てくるし、そういうもんだろとしかいいようがない。
例えばその気があったかなかったかは確かに重要なポイントだけれども、業務上の過失であろうが殺意ある計画的犯行であろうが、この社会のルールでは人を殺してはいけないことには変わりなく、人の間で生きている以上は規約を守ることに『同意します』とサインしているのと同じとみなさねば何事も成り立っていかない。守りたくないけど守られたいというのは理屈に合わない。行政上どうすればいいのかはよく判らんが、個人的な感情レベルでは脊髄反射でそう思ってしまうな。他人に厳しいもので、すんまへん。