映画:『ダバング 大胆不敵』(監督:アビナフ・シン・カシュヤップ)


サルマーン・カーンの保安官映画である。いや違った、警察映画なのだが、内容がすっかり天下御免ウェスタンなのである。途中でそれでいいのか! と笑ってしまったのだが、あとからそうかこれはウェスタンだからいいのか、と納得。細かいギャグ盛りだくさんの楽しい映画だった。
最近、熊がインド映画づいているので付き合ってよく見ているのだが、これが滅法面白い。これまではインド映画というと話の途中で突然歌って踊り出し、とにかく陽気で長いなんていう、『踊るマハラジャ』(実は観てない)が流行ったあたりに定着したイメージしか持ってなかった。それが実際に何本か観てみるとあにはからんや、差別問題を題材にしていたり、愛とは何か哲学的に追及していたり、もちろん文学作品あり本格的なミステリありで、思っていたのとまるで違う世界が広がっていたのだった。これが東洋思想の一端か。インド社会は保守的なので映画上でもどんなに盛り上がっても未婚の男女はキスすらしないくらいエロもグロも抑え気味なのだが、そうした制約が良い方向へ作用していて観念的なものへ見事に昇華されているのだ。救いのない話はとことん救いがなく、愛はどこまでも愛で、そうした観念に酔っていると群舞の意味もまた違った風に見えてくる。
いままで観た中で特に圧巻だったのは、ロミオとジュリエットをインド版にリメイクした『Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela』。美術が物凄いのでそれだけでも観る価値がある。

それと行き違いと不幸が重なって誰も幸せにならない結果を生み出してしまう『Raanjhanaa』。これが究極の愛の在り方なのだろうかと唸ってしまった。恋愛をテーマにしてよくもここまで容赦のない展開にしたものだ。

どちらも日本ではDVDになっていないので英語字幕で見た。私は英語ができないのでよく判らない箇所はもちろんあったのだが、そんなの全く問題にならないくらい凄い。オススメです。