映画:あなたがいてこそ (監督:S・S・ラージャマウリ)

  • 田舎の一族には血で血を洗う因縁の抗争があった。
  • 主人公のラームは都会でボロ自転車を疾らせて配達業をしていたけど、いつも配達時間に遅れてばかり。オート三輪を買えと言われても貧乏なので無理。ボロ自転車は喋るファンタジー
  • 田舎に相続した土地があるって判ったよ! やった、これで土地を売ればオート三輪が買える。
  • ところで田舎の豪族ラミニドゥ家は任侠の世界で、都会のチャラ男に軽く侮辱されたら簡単にぶっ殺して始末しちゃうよ。でも家は汚せないから敷居をまたいでからね。
  • 話は戻って田舎へ行く汽車で乗り合わせた女性アパルナは絵が上手い。
  • アパルナのお父さんが汽車に使用人の寄越して食事を届けさせる。もしかしてお金持ちのお嬢さん?
  • 田舎の土地を見に行こうとしたら判りにくいので道を聞いたらそのまま送ってくれたお兄さん、いい奴。
  • でもアイツ敵! そう、主人公はラミニドゥ家の昔の抗争相手の息子だった。血縁は根絶やしだ!
  • ところでアパルナと従兄であり幼馴染でもあるブラフマージーはいいコンビ。でも許婚っていわれても、お互いそういう感じじゃないしねぇ。
  • 話は戻って自分が宿敵とはまだ知らない主人公、土地を売りたいなら豪族ラミニドゥ家に相談すればいいと聞いて訪ねてみたら、お互い初対面だけど礼儀正しくていい感触。
  • その上、アパルナはラミニドゥ家の娘だった。これもご縁ねぇ。
  • でもアイツ敵なんだよ!! えっ!(←全員把握)
  • 待て待て、家を汚しちゃいかん。敷居をまたいでからぬっ殺せ。

ここまでが前半である。
インド映画は長い。最近は短くなってきたとはいえ、この映画だって2時間半くらいはある。途中で休憩を挟んで、前半後半に分かれるのが通常だ。お話もだいたい前半で掴んで後半でもうひと波乱起きる前後編のようになっていることが多い。ほんわかした恋物語がシビアな復讐劇になったり、違う話なんじゃないかと思うほど前と後でガラリと雰囲気が変わることもままある。1時間ちょっとずつの2話連続だと思えばそれほど長くもないし、長い分だけストーリーが間延びするかというと全然そんなことはなく、それだけの間に起承転起承転結くらい詰め込むのでむしろ濃いのである。構成組むのは大変だろうな。
それはともかく、これが2時間弱の映画だったらアパルナと従兄の関係ももっと単純なものになるだろうし、汽車での出会い(このくだりがなかなか好い)も簡単に済まされただろう。ラミニドゥ家がどんな一族かの説明も難しくただのヤクザ一家になってしまうかもしれないし、ラームの自転車もアパルナの絵もカットされそうだ。長いからこそ複雑な描写ができるし細かい伏線も張れるのである。従兄の立場も二転三転することで妙味を増し、それぞれの個性や小道具などが生きてくる。前半で家から出られない顛末をじっくりやっているので、後半の家を飛び出してからの展開が盛り上がる。変化をつける下地が作れるんだな。映画ではなく連続ドラマを観ているようで、そういう意味ではインド映画はひとつのジャンルを確立しているのだな。