溺れかけの近況

ノー残業デーだったので19時に事務所を出られた。この時点で何かが間違っている気がするが、仕事があるんだから仕方ない。それでもあまり居残ると会社から怒られるので、急ぎの案件だけ片付けて帰途に就いたのだった。
電車に乗り、運よく3駅目くらいで座れたのでデンワも本も見ずに目を閉じた。次から次へとトドの群れが押し寄せてくるのを、返り血を浴びながら右から左へ処理をし、ぬめった地面に足を取られてすっ転ぶような毎日である。仕事のことや瑣末な日常のことを考えていたら、いつの間にか意識を失い降りるべき駅を乗り越していた。せっかく早く帰れた日だというのにがっくりである。
もう無理は利かないな。帰宅すれば野菜を茹でて気分で決めた調味料をぶっかけて食べるだけ。空腹が満たされたらあとはただ眠くなる。ひと手間かければ生活は豊かになり、ひと手間できちんと整頓された空間で暮らせると判っているが、そのたった10分の手が回らない。洗濯物は畳むのを諦めてしまい、なし崩しに洗いあがったもの用のダンボールを床に置き、取り込んだらその中に放り込む方式となっている。やれやれだぜ。しかしこれが割とキライじゃないのも事実である。
なにか買うにしても選んだり悩んだりするのが楽しみのひとつだろうに、こうなってくるとそれすら無駄な手間に思えてくる。洋服も好みの範囲をカバーするものから、手入れの楽なものや着回しの便利なものへシフトし、化粧品も何種類も買わず社会人として最低限のものでなんとかする方向へ転換していく。モノも手間もどんどん削ぎ落とし、限界を超えて簡略化したらその先はどうなるのだろう。と夢想してうっとりするものの、やっぱり凡人の哀しいサガで、広くて寝心地の良いベッドや電子機器や工作道具は削れないんだけどな。
つまりやることが許容量を超えていっぱいあって案件に溺れかけているということなのだが、なにが楽しいのか今週も来週も予定がみっちりである。美容院でカラーリングする暇もない。後先考えずここまで詰め込む自分に呆れるぜ。