映画:きっと、うまくいく(監督:ラージクマール・ヒラーニ)


いままで観たボリウッドとはなんだか雰囲気が違うなぁ。お気楽なポジティブ・シンキングぽいタイトルだが、内容はあれだ、坂本九の「上を向いて歩こう」のほうに近い。表面上はインドの工科大に入学した3バカトリオが繰り広げる青春グラフティといってもいいのだが、苦い競争社会の犠牲や社会格差がストーリーを陰で支えているのである。高度経済成長における歪みと明るい未来というのだろうか。ボリウッドらしく歌と踊りはもちろんあるのだが、ストーリーのほうも緩急つけてきっちり伏線を回収しつつ客を驚かせるどんでん返しも仕込んであり、2時間半の長丁場ながら冗長になりすぎず観ていて飽きない。こんなインド映画は初めてだ。
潔癖な理想とベタなギャグやちょいシモ寄りのおバカさの混合具合がいかにも男子学生らしくて楽しい。ランチョーは親が金持ちで友達思いのいい奴でしかも成績も抜群だなんてずいぶん格好好すぎないかと思ったら、そこにもちゃんと仕込みがあった。舞台となった工科大もただエリート輩出校というだけでなく工科ならではの展開があるのね。現実は厳しいけども自分の手で工夫してなんとかしようとする真っ当さが眩しい。カースト制とか社会格差なんて外からは何とでも言えるけど、彼らにとってはそれが抜き差しならない生きる現実なんだよなぁ。
それにしても最後のシーンの舞台となったラダック地方はこの世のものとは思えない凄い景色だったな。あの湖は中国との国境にあるパンコン湖だとか。ボリウッドのミュージカルシーンでこういう背景がときどき使われるけど、インドも広いからいろんな絶景があるんだろうな。いろいろ検索していたら、ロケ地を紹介したサイトに行き着いた。(BollyLocations-3 Idiots
仕事に追われなんか楽しいことないかなぁなどと他力本願にネットをうろつくしけた日々にあって、なんだかとても救われた気分になるいい映画であった。