- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
それともある種の男性にとっては、恋愛はセックスするための幻想だというのが前提なのか。ただ、生物学的な事実は事実で否定するつもりはないけども、恋愛感情というのも存在する以上、一概に排除するのは片手落ちであろうと、私は考える。
いや、この小説がそうだというのではありません。遺伝子を残す手段としてのみ性交があるのなら、この小説のように他の欲望とない交ぜになった性欲を持て余して苦悩する人物像はあり得ない。
周りに誉められたい、自尊心を満足させたい、いろいろひっくるめて幸せになりたい等々、行動の元になる欲望をつぶさに分析してみると、ヒト(特に男性)にとって、性交とは何なのか、性交とは棒を穴に突っ込むことで、その周囲を繭のようにぐるぐる巻きにしている幻想(性癖とか)のことでもあることが判る。
それだけなんだよ。
うん、そうだね。で?
性癖を飛び越えたところにある、その人だけは傷つけたくないと願う、Nの存在か。それが愛だと?
判らない。男性にとって「それだけ」であるのは、何か不都合があるんだろうか。
恋愛は幻想である。遺伝子を後世に残すために、異性と番う手段としてある。
一理あるけども、それは一方的な見方にすぎず、逆から見れば愛こそすべてで、セックスのない恋愛もあるわけで、どっちにしてもどちらかに偏ると嘘くさい。
生を死ぬまでの時間潰しだと思うか、連綿とつながる鎖の輪だと思うか。
もっとも、鎖そのものに価値を見出せなきゃ、意味のないことだけど。