DVD:アンドロメダ

アンドロメダ シーズン1 DVD-BOX

アンドロメダ シーズン1 DVD-BOX

数年前に放送された海外SFドラマの『アンドロメダ』のDVDを一気に借りたので、このごろつらつらと観ている。ケーブルテレビで途中はところどころ観たけど、最初と最後は未見だったのだ。ところで放送終了して二年くらい経ってるのに、最後のシーズン5のDVDが発売されてないらしいんだが、そりゃあんまりだ。頼むよ、カプコン‥‥。
遠い未来の宇宙が舞台で、人間の他に知的生命体がいるのも当たり前の世界である。種族同士の反目だったり協力体制が描かれたりしつつ物語が進んでいく。そこで繰り広げられるのは、でも結局人間が地球上で繰り返してきた民族闘争や宗教戦争のようなものをデフォルメして舞台を宇宙に移し替えたものなんだな。
大きさは人間並みのアリンコみたいな昆虫型の宇宙人が人間と友好関係にあったり、マゴーヴと呼ばれる毒牙を持ち生きた人間に卵を産み付ける食人種族がいたり、物理学が得意で専門バカ的なペテルセウス星人とか、いろいろ出てきて楽しい。そのなかに『ニーチアン』という種族がいる。このドラマで白眉だなぁと思うのは、彼らの存在だ。
おそらくニーチェからきているネーミングなんだろう。ある科学者が遺伝子操作によって作り出した亜人間という設定だ。彼らはとにかく『生き残ること』を至上命題として、遺伝子優生学的に理詰めでものを考える。
つまり、肉体的に強くなければ生き残ることは出来ないから、常に『最高の戦士』たらんとするし、そのためのトレーニングも欠かさない。これがナルシストだからではないのがミソ。生きる目的は突き詰めれば遺伝子を残すこと、子を残せば遺伝子は受け継がれていく、受け継がれる限り自分は永遠に生き続けることができる、という明快な哲学に基づいているのだ。男は女に選ばれるため、常に勝ち続け実績を残さねばならない。強い男は何人もの妻を持ち、より多く自分の遺伝子を残せることになる。女はより強く生き残りやすい遺伝子を求め、男を値踏みする。そうすると種をバラ蒔くだけの男は子孫を残すには不適格であり、目の前の妻子を常に身体を張って全力で守り切るのが男たるもの、すなわち遺伝子を守ることに繋がるという価値観である。
生き残るには肉体だけでは話にならない。頭脳も優秀でなければいけないのだ。だからマッチョなニーチアンはよく読書をしより深く思考する。人生に困難を求めて経験値をあげ、見聞を拡げようとする。ここでは騙されるほうが劣っていて、他人を出し抜けるだけの知能を持っているほうが優秀だとされる。生き馬の目を抜くような人生観である。
実際に彼らのような人がいたら付き合いきれないと思うが、それでも彼らは野生動物のように美しい。
口であーだこーだ言うのは簡単だけど、目に見えるようにこうして突き詰めたカタチを提示されると、頭ひとつ抜けたものは何にしろ肯定するしかないよな、と思ったりする。

  • 十分に自分自身を支配する力がなく、絶えざる自己支配・自己克服としての道徳を知らない人は、無意識のうちに善良で同情的な情動の崇拝者になってしまう。
  • あなたにとってもっとも人間的なこと。それは、誰にも恥ずかしい思いをさせないことである。

   ニーチェ