- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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読んで最初に意外だったのが、サイキックものだったということ。舞台が第一次大戦のあたりで東ヨーロッパ、というのは読む前から判っていたので、そのへんをつつけばかなりこみいった話が紡ぎだせるだろう、それだけで一冊ぶんのネタには充分でこれ以上盛り込まなくてもいけそうだ、だからいわゆる近代史ものなんだろうと勝手に思い込んでいたのである。しかしそこにひとひねり。
五千人にひとりとも一万人にひとりともいわれる感覚を持った人間が、歴史の影で暗躍するのだが、感覚というのは感応力のようなものらしく、これを持った人同士が話すと言葉の他に感情を直接伝えることもでき、更にイメージや映像なんかもやり取りできるらしく、非常に展開が速い。人間同士が知り合って、お互いの心の中に踏み込むまで、あるいは軋轢や葛藤を生み出すまで、普通はまどろっこしいやり取りと時間を費やすことになるが、感覚があるためにそれがより直接的になる。また、勘違いや嘘が無意味になることで、無駄がそぎ落とされる。
それだけに言葉のひとつひとつに遊びがなく、キリキリと緊張感を持って話が突き進んでいくので、細切れに読むより一気に読むべきだろう。面白い。長編も読んでみたい。
しかし読んでいるうち頭の中でジェルジュが金髪サラサラヘアーの線が細くて腐女子萌え〜な絵になって仕方がなかったよ‥‥。