DVD:白い家の少女(監督:ニコラス・ジェスネール)

フライトプラン』のジョディ・フォスター演じる冷酷な少女の、悪魔のような所業を描いたサスペンススリラー。人里離れた白い家で暮す少女・リン。それを不審に思った家主がその家を訪れるが、そこには思いも拠らぬ事態が待ち受けていた。

ジョディ・フォスターの初主演作である。作品紹介にはサイコホラーとか冷酷な少女の残酷な所業とかおどろおどろしい煽りが並んでいるのだが、これは思春期の少女の普通の心像風景なんじゃないかな。
図々しく入り込んできて家具の配置にまで口を出す家主の夫人に対し、少女リンは『ここは私の家よ』と何度も繰り返す。これが『家』ではなく『部屋』だったら、そこらの家庭でよく見られる母娘のありふれたやり取りではなかろうか。聖域に踏み込んでくる過干渉な女家主は非常に憎々しいが、しかしその聖域自体がもともとその女のものであるという苦しさがあるのも、まるで思春期の反抗期そのもの。家主の夫人は『母親』の投影なのだろうな。もちろん極端に単純化したある一面のみだけども。
考えてみると自分もこの年頃には、こうやって気に入らないヤツは誰も彼もぶっ殺したかったっけ。ふざけたふりして胸元に手を突っ込んでくる近所のオヤジもいたし、頭ごなしに『生意気だ!』と金槌を振り上げられたこともあったもの。もちろん現実は映画のようにはいかない。偶然も重ならないし毒物も手に入らなかったし都合のいい恋人役も現れなかったし、なにより目を光らせた両親が健在であったから実現には至らなかったけども、夢想はしたよね。
それは誰にも干渉されない環境で、自分のために闘うことに憧れた、つまり大人になりたかったということなんだろう。自分がまだ大きなものに守られているとも知らないままだった。この映画はそんな年頃に夢見るような生活がぎっしり詰まった、観ると胸の内がきしる玉手箱のようだ。
それにしても14歳のジョディ・フォスターはクールだったな。