屋形船


ちょっと前だが、憧れの屋形船に乗ったのだった。
気風のいいベリーショートに法被姿の粋なおかあさんの船だった。興がのると英語の単語が飛び出すのが可笑しくて笑わせてもらったのだが、そうか、ああいう仕事だと外国の方もよく接客するんだろうな。そんなおかあさんが私の顔をじっと見つめ、「あなた、絶対外国の血が混じってるね。バタくさい顔の人はよくいるけど、あなたはパーツが揃ってるもの」と真面目な顔をしてのたまうのだった。私のルーツがどんな人なのか、残念ながらどん百姓の系譜なので三代より前の人などよく判らない。逆に考えると血筋に厳格ではない、むしろゆるい自由さはあったのだろうから、昔どこかで漂着したとつくにの人が私の先祖のひとりとして混じっていても別におかしかない。判らない以上は、逆に何があったと仮定しても否定できないのだ。そう考えるとなんだか楽しいかもしれない。先祖が河童だったり外国の人だったりなんでもアリの適当な我が家。
屋形船といえば天ぷら。揚げたての天ぷらはとても美味しかったのだが、油っこいものを小出しにされると意外と腹に溜まる。他にもたくさん食べるものは出るし、船はゆらゆらするしビールは飲むしで、途中で食べられなくなってしまった。三半規管は強い方だと自負していたけど、揚げ物を食べるとなると多少影響するらしい。