映画:レッドクリフ Part2―未来への最終決戦―(監督:ジョン・ウー)

いや〜、三国志なのに燃えないね! 火薬はドッカンドッカン燃えてたけどね。見せ場はそこかな。あ、あと百万本の矢のくだりはキッチリ入ってて、重みで船が傾いたりするのが芸が細かくて楽しかった。
パート1のほうはおかしいながらまあ楽しかったんだが、しかし激突の手前で次回へ続くと引っ張って、あとそんなにエピソードあったっけ? と思ったら案の定‥‥感想を書いていたらついボロクソになってしまったので、隠しておく。


かなり脚色されたエピソードを連ねたストーリーなんだが、そのどれもこれもが全部微妙。お陰で最後の火薬ドッカン!までが長い。せめてもうちっと中華らしい演舞をしてくれればなぁ、という気もする。中国のテレビドラマでももうちょっと槍とかみせるぞ。
周喩孔明が仲良しってーのがもう既に無理があるんだが、孫夫人が男装して敵陣営に偵察に行くって、なんだそれ。どう見たって女だし喋ったらバレないわけねーだろうがよ。まるで下手なラノベ展開である。どうせ超展開するなら虎に乗って駆け回るとかにして欲しかった。(蒼天航路
孫権は碧眼ともいわれていてだな、呉のあたりはけっこう南のほうだしわりと西洋人の血が混じっているようなエキゾチックな地域なんだな。もひとつついでに、孫権はのちに関羽を処刑した人ね。
絶世の美女といわれた小喬には大喬というそのまんまな名前の姉がいて、「江東の二喬」と異名をとる美人姉妹である、と演義には書かれているが、正史のほうにはまともに出てこないらしい。姉の大喬孫権の兄である孫策奥さんだ。兄ちゃん早死にしちゃったけどな。曹操がはべらせたいといったのは、「江東の二喬」。小喬だけじゃない。つまり当時の戦争では美女も戦利品ということだと思ってたんだけど、特別懸想してたとかそういう話ってあったっけ? 時間稼ぎに説得に行くのも、むしろ夫の邪魔してどうするよ。しかも侵略されてるのに『戦争反対!』ってな頭ん中お花畑満開の自ら人質になりに行くというスタンドプレイ。あり得ない。それを気にする英雄たちもアホかと。なんだかしらんけどトンチンカンなお姫様奪還が最終目的になってるし、あああ(泣)そんなトンでもエピソードを入れるために黄蓋の苦肉の策はやらないのかよ! 恩ある老将にそんなことはさせられませんって、おぉーい! おじいちゃんは大事にしましょー!?(ヤケクソ)ほんで創作なら創作で『私は好きな人の身代わりなのね! キィー!!』とハンケチを噛み締める曹操の愛妾は何のために出てきたんだ? そこで敵を手引きするなりなんなりしないのか? しないんである。
演義では周喩孔明が賢すぎてヤバいので、何とか難癖つけて早いうちに殺しておきたかったんだよな。悠長に鳩飛ばしてる場合じゃない。なんだかんだあって孔明は風が吹くように祈祷してたんだが、その東風が吹いたドサクサに紛れて劉備のところに逃げ帰ったくらい殺気を放っていたんだよ。そんで同盟を結ぶために政略結婚として孫権は妹の孫夫人(孫尚香)を劉備にやったわけで、映画の話は超訳を通り越してまるでキャラクターを組み合わせて遊ぶテレビゲームである。
ジョン・ウーらしい剣の舞とか布ヒラヒラとかの美的映像はあったけど、ベタベタの友情物語とか戦国時代の人物像にしてはあまりに覚悟の薄い軽薄なお涙頂戴とか、ストーリーがズッコケまくりでとっ散らかってるので、子どもが観ても面白くなさそうだ。
しかし、ジョン・ウーってば周喩趙雲子龍が好きなんだな。タイプ的には判らなくもない、というか、判りやすい趣味だ‥‥。