読了:永遠の都ローマ物語―地図を旅する(ジル・ジャイエ)

永遠の都ローマ物語―地図を旅する

永遠の都ローマ物語―地図を旅する

詳細な4世紀ローマの再現地図(鳥瞰図)がついており、それを見ながら名所を巡る構成になっている。これを作成したのはフランスのイラストレーターであるジル・ジャイエ氏。彼は子どもの頃から筋金入りのローママニアであったらしい。本の紹介に『30年にわたる研究と8,000時間をかけて描いた緻密なパノラマ地図で、古代ローマを完全再現。』とある。
しかしそれだけでは味気ないガイドブックのようだ。この本の凄いところは、ローマを訪れた地方の青年の目を通して当時の生きた街を描写しているところである。暑い日差しが首筋を焦がし、店先に並べられたなめし革の匂いがたちのぼる。
違う時代の違う土地、違う文化に思いをはせるとき、いつも「そこに生きていたらどんなだっただろう」という憧れとも好奇心ともつかない気分にかられる。私が映画を観るのも小説を読むのも、そうした個人ベースの生活感情を疑似体験したいからというのが大きい。
ここでは地方貴族の息子が政治的な目的を持ってローマに入り皇帝に謁見するという簡単な筋書きに沿って、旅から始まるそれに纏わる諸々を書き起こし、ガイドブックに載っているような各所を詳細に見て回りながら、当時の風俗や慣習、文化を逸話を散りばめて説明してくれるのだから堪らない。民衆の間にじわじわと広まり始めていたキリスト教と、それまで信仰を集めていた多神教との微妙な空気感まで伝わってくるのだ。
もちろんローマ風呂にも入るし馬車競技も観戦する。途中で金融機関が破綻したり聴衆に向かって弁護士が弁舌を振るう場面にもでくわす。ぶらぶら坂道を登っていって神殿に参ったり、逆に郊外のほうへ出てみたり。特に下町のトラステヴェレのあたりは活気があって面白かったな。
写真もふんだんに使われたこの内容で大判オールカラーの219ページが2,940円とは破格である。合間に挟み込まれている詳細な地図にもまた圧倒される。最後に縮尺は小さくなるけど全体図も折り込まれていたよ。これを片手にまた英米合作ドラマの『ローマ』を観返してみようっと。
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