- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 単行本
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現代の東京。あたしは本当の祖母の遺品を引き取る。若くして亡くなり、存在を抹消された祖母。数少ない遺品の中には、祖母の姉からの手紙があった。
すべてが二重三重になっている。重ねることで強調され、説得力を持ち、骨太な姿を顕現させる。
溢れる言葉、次々と繰り出される音楽、圧倒的な水量の洪水には抗うのも虚しい。期待通りのフルカワでした。
これの前作に当たるのが、処女作の「13」で、色彩を扱っていましたね。今回は音です。
世界には分子や波長があるだけで、そこに色や匂いや音を感じるのは、受け手の人間の感受器官による。音は空気の振動で、振動は耳でキャッチされ、情報として脳に送られて解析される。耳がキャッチできる振動の範囲は限られている。受け側の性能が違えば、当然見るもの聞くものは違ってくる。
世界は見えているままのものなんだろうか? チャンネルをずらせば、まったく違うものが見えるんじゃないのか。
苦手な人には冗長で読みにくいのかな、とチラと思ったりもしますが、わたくしは非常に興味深く読めました。