痴漢の話

前にも痴漢の話は書いたのだが、今回は別の話。
世の男性からは、痴漢話に花を咲かせる婦女子は、まるで自慢しているかに見えるらしい。
痴漢に遭うにはメスとして魅力が必要だから、どれだけ痴漢されるかをそのバロメーターにしている、という。婦女子も色々なので、そういう手合いも皆無ではないと思う。が、大多数は本気で怒っているので、よってたかって悪口を言うことで、憂さを晴らしている。というか、私はそうだ。
多分、大抵の男性には何がどうしてそんなに怒るのか、理解できないと思う。ええと、性倒錯しておられる方には申し訳ないが、話が煩雑になるので生物学上の雌雄の話とご理解されたい。あしからず。


電車など、周囲に人がいて身体が密着するのを利用する痴漢の場合、恐怖よりはイヤらしさが先にたつ。その狡さには反吐が出るほど嫌悪を覚える。その時に刃物を持っていたら、衝動的に刺したくなるほどだ。護身術ではその腕を取ってヒネるというが、汚らしくて触りたくない。普段は特に潔癖でもきれい好きでもない私だが、そう感じるのだ。なんかこう、その手に精液が塗りたくってあるかに思える。
メスの魅力なんて、そんなもんどうでもいい。触るんじゃねぇ下郎、てなもんである。この気分を敢えて喩えるなら、下着の中にでかいゴキブリが這い込んでくるようなといえば、男性にも少し想像がつくのではないだろうか。
他に暗がりで追いかけられたり局部を見せつけられたり、便所の個室を覗かれたりするのは、周囲に人がいないので、何かされるかもしれないという恐怖がある。この恐怖はその立場になってみないと判らない。
ふと思ったんだが、表現するならホラーに近い。
殺人鬼の幽霊が斧を持って襲ってきたら、怖い。その場にいれば物凄く怖いが、話だけ聞くとギャグになってしまうところも似ている。
まぁ、殺人鬼の幽霊でなくとも、小学四年生の男の子の幽霊が電信柱の脇に座り込んでじっとこちらを見ていたら、でもいい。髪の長い女性の幽霊に急に背中の衣服を掴まれる、でもいい。
そんなのを「いや〜幽霊に好かれちゃってさぁ」と自慢できるかい。
それは誰かに喋らずにいられないほど、怖いのだ。痴漢や変質者は蓋を開けてみればただの人間だし、そんな恐怖を誰か知らない人に与えられたら、普通ムカつくだろう。婦女子の皆さんは、そういう恐怖体験を共有しているのだ。