フリーフリーフリー!

自分が行くって言うから待ってたのに、行けないなら初めからそう言ってよ。
彼女はそういって怒る。
私は昔どこかで聞いた話を思い出す。
誰から聞いたのか、子供の頃に二羽のセキセイインコを飼っていた話だ。
アルミの網にプラスチックの受け皿がついていた。インコが出した糞は網を通して受け皿に落ちるようになっていたから、そこに古新聞を敷いておいて、一日に一度取り替えなければならなかった。餌は二、三日に一度、殻を吹いて飛ばして、新しいものを足す。
だけど子供だったから、つい遊びに夢中になって世話を後回しにしていたら、一羽が落ちて死んでいた。
あっと思った。いつの間にか籠は汚れて、不潔になっていた。そのせいで死んだのだと母親は叱った。
みなさい、自分でやるって言った事はやらないと、こういう結果になるのよ。
水が悪くなっていたのかもしれない。夏だったから。
突然の死にショックを受けつつ、庭に埋めた。
それからいくらもしないうちに、残りの一羽が逃げた。餌を替えるために籠についている小さな戸を開けたら、その隙間に無理やり体をねじ込むようにして、空に飛び立っていった。
近所の神社の林には、色とりどりのインコが群れを作っている。どうやら外の世界は厳しいけれど、生きていくには困らないようだ。


別に頼んでないし、と彼女は言う。面倒見て欲しいわけじゃないのに。無理するぐらいなら自分でやるのに。
そうだね、と私は相槌を打つ。
でも彼はそうしたいんだね。そこが難しいところだね。