男女逆転

私事だが今回の騒動で気になったことがひとつ。
同居人は働いていない。家事をしながら日本で一番難しい資格試験のひとつといわれるものを取得するために、日夜勉学に励んでいる。このたび私の仕事の都合で上京することになったのとほぼ同時期に、身内に彼のことがバレた。
一般的にそういう男の事を、ろくでなしとか宿六とか穀潰しとかニートとかヒモとか表現するのは私も知っている。周囲の理解が得られ難いことは百も承知だ。
それは仕方ない。判っていてやっていることだから。
ただ彼の存在を知った身内の反応が、ちょっと可笑しかったのだ。
男性陣は複雑そうな顔をしていたが、色んな人生があるんだし本気なら仕方ないけど、大変だよ、という感じだった。
過激なのが女性の忌憚のない意見で、まずは「そんな男はやめろ」。
それがダメなら「バイトでもなんでもいいから、とにかく働かせろ」。
そして「今回上京するのがいい機会だから仙台に置いていけ。男には自分の力で部屋を借りてもらうなりして追いかけて来させろ」。
極めつけに「アンタ、一生、その男を養うつもりなの」。
‥‥つーかさ、自分はずっと夫に養ってもらってるよね。それを不思議だとは思ってないでしょ。専業主婦は人として恥ずかしいからなんでもいいから働けって言われたことがあるんだろうか。
挙句の果てにやっぱり一緒に行くと知ったら「ああ、ヤダヤダ‥‥」とのたまった。
そういう女性は夫が急に「自分が主に働くのは不満だ」と宣言したらどうするんだろう。で、「俺は遠くに引越すけど、お前を連れて行く気はない。一緒にいたいなら自分で稼いで部屋を見つけて勝手に追いかけて来い。それまでの間は実家に帰るなり、好きにしたらいいだろう。俺はお前の住む場所を確保してやるつもりはない」と言われたらどう思うんだろう。そんで「これからは自分の食い扶持は自分で稼げよな」って? ギャグだよな。
夫の稼ぎがいい女性ほど、こういうことを臆面もなく口に出す。


男女同権といってもやっぱり男性のほうがより多く稼ぎやすいのは事実だろうし、それ以前に私の能力では大して稼げないわけだから、私が彼を一定期間養うという選択はかなり厳しい生活を強いられるということを意味する。不可能ではないにしてもちょっと非現実的なのは確かだ。私がもっと有能な人間で、人をひとり養うぐらい屁でもないような働きをしているなら、こんな風に周りから心配されることもなかったんだろう。さっさと入籍して扶養家族にしてやれれば良かったとは思う。
そして身内の批判に反発するあまり、身贔屓な論調になっている気もする。ああそうさ、正直苦しいこともあるよ。他の家庭のように主に相手に働いてもらえれば、同じ働くにしても肩の荷が下りるし気分的にも楽だと思うこともあるのも事実だ。
だけど、どうだろう。妻にどうしてもやりたいことがあったとして、夫がそれに理解を示すのはそんなに批判されることだろうか。
私だって挑戦したらなんでも上手くいくなんて楽観はしていない。下手したら最低限の生活を一生続けることになるかもしれない。それは人生をかけてる本人が一番よく判っていると思うんだがな。