読了:タイタンの妖女(カート・ヴォネガット・ジュニア)

すべての時空にあまねく存在し、全能者となった彼は人類救済に乗り出す。だがそのために操られた大富豪コンスタントの運命は悲惨だった。富を失い、記憶を奪われ、太陽系を星から星へと流浪する破目になるのだ! 機知に富んだウィットを駆使して、心優しきニヒリストが人類の究極の運命に果敢に挑戦した傑作!

何の気なしに語り始められる話は、軽妙に進んでいってあれこれが徐々に積み重なり、最後に全体が大きな絵となったときに、絶妙なやるせなさを描き出している。
あ、これとこれが繋がるんだ、と気付いたときの胸にこたえる感じはなんともいえない。皮肉が入れ子になっているのだね。読後は『なんてこったい』とぽかーんとしてしまった。
冬の夜に暖炉の脇で話されるような、静かな、しかし表情豊かで面白おかしくやがて哀しい人生譚。

たぶん、天にいるだれかさんはおまえが気にいってるんだよ。