ぐーるぐーる(腹が)

腹がくだった。自業自得である。
前にも書いたように微妙な体調不良が続いていたのだが、そのせいかどうかだんだん腸の運動が滞ってきていた。体調が思わしくないと、とりあえず暫時止めても支障のない部分から休眠状態になるのはよくあることである。先に綻びたところの修復に集中し体内の連動がスムーズに復活してのち、再度動き出そうというのだろう。
その目論見は判るがしかし、出ないのが困るというよりガスがたまって苦しい。下腹がパンパンである。
普段はあまり便秘に悩むということはなく、月のうちに体内の水分量が上下するのは自然なことで、身体が水分を溜め込もうとする時期には腸内の水分も減るので推して知るべしだが、それもそう極端なものではなく、一週間もすれば体内の情勢に変動があって原因が取り除かれるので、勝手に解決する。とりたてて辛い苦しいと騒ぎ立てるほどのこともない。
そんな体質なので、自ら整腸剤を購入するということはここしばらく絶えてなかった。
しかし今回は事情が少々違う。下腹が風船のようである。中身は主にガスらしく、押すとふくふくとした弾力をもってへこむが、内側からの圧力で手を離せばまるく膨らむ。制服のボタンがはちきれそうである。
これは始末せねばなるまい。
ここは正攻法でいけば薬局で新しい頓服薬を手に入れるところだが、いや待てよ、と考えた。
確か、試供品で貰ったピンクの小粒がまだあったはず。
帰宅して薬箱をひっくり返してみると、案の定、そこには銀色のパウチが残っていた。いつ貰ったか知れないが、これはしめたと早速コップの水と共に嚥下し、効果を待ったのである。
しかしなかなか兆しはやってこない。試供品が古かったのが悪かったのか、丸く膨らんだ腹はうんともすんともいわず、当然のような顔をしてただそこにある。
相乗効果を狙うために、ビールも続けて飲んでみた。
しかし体調に変化はない。
そうこうするうちに夜は更け酔いも手伝って眠くなってくる。これは効果がないらしい。仕方がない、今日は諦めて明日新しい薬を入手することにしようと思い定めて、ベッドに入った。


不穏な気配で目が覚めた。外は既に明るくなっている。
気体の詰まった腹が、ぐるぐると蠢きだしている。まるで未知の生物が宿主の意思とは無関係に腹の中で動いているようだ。間断なく幾度も暴れだす蠕動運動はとどまることを知らず、結局午前中は外に出ることができなかった。


かくして腹はへっこんだ。空っぽになった体腔内に善玉菌を補充すべく、ヨーグルトを大量に摂取して危機を脱したのであった。


今日の午前半休の言い訳は以上である。