三年目検診

今回の帰省は歯医者へ行くためであった。
歯列矯正が終わって三年経ったのだそうな。ということは、顎関節の手術をしてから五年が過ぎたことになる。その間にもいろいろありすぎて、自分でどれが何時だったのか訳が判らなくなりつつある。出来事の年代順すら錯綜してくる。三十代でこれではあと十年二十年経ったら世界は混沌のスープになってしまいそうだ。濁った泥水のような鍋の中から、プカリプカリと煮溶けた何かの破片が浮かび上がってくるようになるんだろうか。液体の色と同化し、原形をとどめないほど崩れた何かが。そして何だっけこれは、と考えているうちに一日が終わり、いつしか考えているということすら鍋の底に循環していくのか。
せっかくだからあちこちの友人たちと会いたいとも思ったが、実家でも晩餐をともにするという義理を果たさねばならないし、一晩くらいじゃなにもできない。ということは私の場合は友人たちと会うイコール飲み歩くということなんだと今ごろ気付いた。たまには連泊してみようかとも思うが、そうすると酔って実家まで戻るのが面倒なため、市街地にホテルをとってしまいそうだ。それくらいなら友達んちに泊めてもらえよ、という気もする‥‥実家が市内にあるのに何故友人宅に居座ることになるのか、我ながら理解に苦しむ。これはまだ妄想段階だが、しかし去年は確か実家に顔を出さないまま友人の家に泊めてもらっていたような‥‥現にそうなってるじゃないか。