逗子の思い出

やれやれというわけで、この週末は電車内に忘れたデンワを取りに行ったんである。

  • 旅のお供に二つ折り製本(A5)した思い出のしおり。

  • 着いた先は青空だった。
  • とりあえず飯を喰う。まぐろブツが美味かった。漁港はいいね。

  • ついでにハイキング。デンワを受け取った逗子駅からもう一駅乗って、東逗子駅から出発である。看板の通りに行くと、コースの入口に石碑がどどんと立っている。
  • 階段を登り坂道を登り‥‥登り‥‥登り‥‥始まって十分で息があがる。ゼィハァ。

  • 石灯籠で気を取り直し、脇を見ると崖といってもいいような急斜面。
  • 地衣類や苔むした古い縁石の写真を撮るフリをしながら休み休み歩く。

  • 二十分くらい登ると、山門が見えてきた!
  • 壁龕にお地蔵さんはよくあるが、これはちょっと珍しい気がする石版。梵字が彫ってある。
  • 神武寺の鐘楼。山王神社のお地蔵さん。

  • 神武寺は信仰者以外は立入禁止。上から覗いたら『まんが日本昔ばなし』に出てきそうな箱庭のような佇まい。洒落者の住職さんなのに違いない。

  • 境内の真ん中にあった大きな切り株。こっちが御神木だったんじゃないかと思うほどの大きさだった。脇から生えてた若木は、同じ根っこから再生してるんだろうか。
  • で、更に登る。

  • 登る。
  • ひたすら登る。だんだん岩だらけになっていく。

  • この先は昔は鷹取石が採れた石切り場だったんだそうで、デカい岩がそこらへんにゴロンゴロンと転がっている。
  • ふと見ると絶景。

  • で、えーと、本当にここを登るんでしょうか。虎ロープが張ってありますが。片側は絶壁ですが。ハイキングってこんなにハードなもんだったっけ?
  • ええーと、やっぱりここを登るんでしょうか。鎖が(以下略)あとで見たら、ここは『親不知』と呼ばれる難所だったらしい。

  • 登りきると、急に青空をバックに石の壁が聳え立つ。写真だと判りにくいが、古代遺跡のような雰囲気である。
  • と思えば‥‥ん? 犬? なんでそんなところに繋がれて‥‥。
  • ここは鷹取石を切り出した跡地で垂直の石の壁が乱立しているので、ロッククライミングの格好の練習場になっているようだ。家族連れや仲間同士で和気藹々と何組も登っている。
  • てか、こんな山奥でずいぶん牧歌的な光景なような‥‥って、あれ?

  • 広場の先にある降りの階段。その先に見えるのは舗装道路と小学校? てか、山越えて隣の町まで来ちゃったってことか。ま、まあ、あの道を帰らなくて済むと思うと急に心が軽くなるな。
  • そうかー、こっちから来れば楽なのかー‥‥と脱力しつつそこに設置されていた自販機で清涼飲料水をガコンと買い、展望台に登る。

  • 巨大な磨崖仏。どれくらい巨大かっていうと、足元に缶ジュースや花なんかが供えてあるのが見えるだろうか。
  • 下から見あげると、こんな感じ。しかし古くからここにあるわけじゃなくて、昭和四十年代に彫られたものなんだそうな。
  • そのすぐ脇の壁にもハーケンの痕が点々と。新しいたって仏様に登るか、ふつー。

  • 岩壁も日陰のほうにくると、急に苔生してひんやりした空気を湛えており、不思議に荘厳な雰囲気であった。実は裏のほうに有志によって彫られたインディーズ磨崖仏があるという噂があって、そのへんをぐるくる探したんだが見つけることが出来なかった。もう消されちゃったのかな。

案内板によると鷹取山からは二十分くらいで追浜駅まで歩けるというので、復路はこっちを経由にすることにした。期せずして、JR東逗子駅から京急追浜駅までの山越えとなったのであった。普段はまったく運動らしい運動をしていない私には苦役のようなハードさだったが、実際のところ二時間くらいで歩けたわけで、好きな人には手頃なコースなのかもしれない。ただ崖が急で段差の大きい箇所があるので、小さなお子さんには向かないと思う。同じ理由で手荷物はリュック推奨。数年前に北鎌倉から銭洗弁天を通って長谷まで山越えしたことがあるが、そっちのほうが崖はなかったし道は広かったし歩くには格段に楽だったよ。
それにしても行った先の目と鼻の先に街がひらけているとは予期していなかったので、見えたときには本当に驚いて変な笑いが止まらなくなった。ていうか、旅のしおりまで作ったのに、行く前に調べがついてないとはこれ如何に、という天の声が聴こえる気がする。出たとこ勝負しすぎだ。
こうして忘れ物を取りにいって、ハイキングという言葉から想像される範囲をちょびっと逸脱した冒険にへろへろに疲れて帰ってきたのであった。インドア派なのに付き合ってくれた相方さん、ありがとう。