目線の高さ


「あ〜ら、いいじゃない! ステキよねぇ」
「そうよ、あたしがもうちょっと若かったら見逃さないわよぅ」
「そうよねぇ、男は丈夫で優しいのが一番よぅ」
「若いっていいわぁ、羨ましいぃぃ」
叔母たちは弾幕のように好き勝手なことを畳み掛けてきた。反論する謂れもないので黙ってたけど、何も知らないのに勝手なことを言われるのは本当にイライラする。わたしがいい顔をしないのは、相手の見た目がどうとか職業がなんだとか、そんなことじゃない。そう、こともあろうに彼はわたしにこう言ったのだ。
「もうオマエもいいだろ。もう充分自由に遊んだだろ。もうオレに決めちゃいなよ。あんまり長い間もったいぶってると、腐っちまうぞ〜ハハハ」
細かいことに拘りすぎだと言われればそうかもしれないけど、いくらわたしがトウの立った年増だからといって、口説くのにこの言い様はちょっと失礼な気がする。別に変な男ならいないほうがマシってくらいなのに、自分のことを救世主様だとでも思ってるのかしら。失礼しちゃうわ。
ケンカしたのだって、照れるとか口下手だからとかゴモゴモいってたけど、そんなのトンチンカンなところに突っ込んでいく言い訳にはならないじゃない。そうじゃなくて? それこそいい大人なんだから、自分の言動には責任を持って欲しいわ。それで文句を言ってもいつのどれのことなのかはっきりしろだとかエラソウに言い返すくせに、自分は謝っただろうって一回こっきり「ゴメンナサイ」と言っただけで、全部の積み重ねがオールクリアできると思ってるし。何についてどう悪いと思ったから「ゴメンナサイ」なのか、はっきり説明して欲しいもんだわ。まったく、話し合いにもなんにもなりやしない。それに変なところが頑固で何か聞いてもなんだかんだと理由をつけて、一度で答えてくれるってことがないのよね。それとも答えたくない理由があるのかしらね。
だからこのズレというかギャップが不安なのよ。そりゃ生まれも育ちも違う他人同士なんだし、結婚してからお互いの考え方の違いに驚くなんて世間じゃよく聞くけど、よく気が合うと思ってこのひととならやっていけると感じて結婚したひとたちですらそうなのに、出発地点からこれじゃ、もっと先が思いやられるじゃないの。
なんていうか、同じモノを見ていても目線の高さが合わないってこのことなのかしら。なんだか頭にきたわ。ドカッ!

(参考 → 『http://mudainodqnment.blog35.fc2.com/blog-entry-715.html』)
※ いうまでもないが、フィクションです。