花火が観たいと泣いて訴えたところ、人ごみが嫌いな相方さんが見つけてきたのは『島から観る花火大会』であった。横須賀の花火大会を対岸に浮かぶ猿島からのんびり眺めようという企画で、大人1人5,000円。このイベントにあわせてついでに横須賀観光することにしたのである。
現地に着いてとりあえずはメシである。横須賀といったらネイビーバーガーでしょう。というわけで、どん。
どんどん。これがパテ110gでハーフサイズである。お腹いっぱい。
お店はドブ板通りのCANTINAというプールバーである。真っ昼間だったのであまり気にしないで入ったが、照明は控えめ、スタッフのおねーさんはアイメイクばっちりのいわゆるオネエ系、壁には英語の落書きが所狭しと貼ってあったり、米海軍のものであろうキャップがズラリと並び、たぶん夜は米兵の方々が多く集い日本人にはちょっと場違いな雰囲気になるのであろう、そんな横須賀ドブ板らしさが垣間見えるお店であった。
相方さんが灯台に行くぞ! というのでバスに乗って観音崎灯台へ。海沿いの道を走り、着いたところは小さな海水浴場であった。このへんは箱庭のようにこじんまりとしたビーチがぽつぽつと点在しているのだな。あまり混んでないしちょっとした岩場があったりと起伏に富んでいるので、ここで水遊びするのも楽しそうだ。天気も良かったので水着を持って来ればよかったと悔やむことしきり。
しかし水着は持っていなかったので大人しく山へ向かう。ところで灯台っていうのは岬の天辺にあるんだよねぇ‥‥で、またですか。また山道でまた鎖ですか。
ゼィハァ‥‥ま、まあ、ウチだって山の天辺だし、自宅に帰るのと比べたらこんなもん、屁でもないわ!
観音崎灯台とは、日本初の洋式灯台なんだそうである。初代の建物は札幌の時計塔を髣髴とさせるような形をしていたようだが、震災などにより現在建っているのは三代目ということで、いかにも灯台らしい白い塔となっている。
灯火部分にぐるりと柵が回っており、人が立てるようになっている。おそらく雨仕舞いの関係だろうが、ここの床が外に向けて若干傾斜しているのだ。
人の感覚とは不思議なもので、平らなところに柵があればさほどでもないだろうに、足場が外に傾斜していると途端に物凄く『落ちそう』な気がして足がすくむ。意気揚々と登ったはいいが、うわぁぁ落ちるぅ〜と肝が縮んで、早々に螺旋階段を駆け降りた。
その後、ゴジラが上陸したという『たたら浜』へ下り、また山へ登って戦没船員の碑に寄ったりして、ハイキングコースをぐるりと回った。このあたりは戦時中から軍港だったため、旧海軍の砲台跡や自衛隊施設や戦没者慰霊碑などが点在しているのだな。しかし豊かな里山がそれを慰撫しているようだ。見事なくらいの雑木林で、山の色は様々なトーンの緑が入り混じっている。
虫もたくさんいて、何故か私にたかられた。相方さんは平気なのに私は一気に五箇所も蚊にくわれ、蜘蛛にも懐かれて一度放したのにまたくっついてきた。
お尻をあげて見えない糸を出し風に乗ろうとしてうまくいかない蜘蛛。よく見ると身体に光沢があってピカピカしていた。突っついたら威嚇してきたのでしばらくウリウリして遊び、しかしあまりに風に乗るのが下手なので最後は手で掴んで放してやった。
それからまたバスに乗って賑やかな街中へ戻り、今度は三笠桟橋のほうへ。メインイベントの前に体力を使い果たしてしまった感があるが、お楽しみはこれからである。島へ渡る船に乗る前に三笠公園で蒸気機関車を見かけたので近寄ってみたら、なんと非常時用貯水槽であった。水道管直結式で、常時循環しているらしい。
夕方から船に乗り10分程度で猿島へ渡る。この島は東京湾唯一の自然島でショッカーの本拠地らしいのだが、今回は夕方からの特別便なので、浜以外の部分へは立ち入り禁止。警備員さんが島の奥へ通じる道を塞ぐように立っていた。普段は夕方5時が船の最終便らしい。なんせインフラのない無人島だし、夜間に動き回るのは思いのほか危険なんだろうな。
しかし、船会社のホームページには『ビール・軽食販売します』と書かれていたが、とても人数分を賄うほどの量はなかったらしく、あっさり売り切れていた。便乗した船のうち我々はちょうど真ん中へんの便で渡ったのだが、その時点で既に食べ物はほぼ完売状態。ぎりぎりでビールと枝豆を手に入れたが、お腹を空かせた状態でこれはわびしすぎる。さすがに後から追加されたようだが、島で飲食したいなら自分で持ち込んだほうが無難だったらしい。あまりにわびしいのでどんよりしながらついったーに別々に書き込むふたり。
しかし本日のメインイベントは花火である。枝豆をつまみながら夕日を眺めるのも乙なものだ、うん。
日が落ちて、いよいよ対岸に上がる花火を堪能する。遮るものがないので、三箇所から上がる花火がすべて下のほうまでよく見える。この日は風が手前に流れていたので、煙がなかなかハケずに被ってしまったのがちょっと残念といえば残念だった。集まった人々が同じ空を見上げ揃って『おお〜』と大玉にため息をついたり、豪華な連続に拍手をしたりする。その場で拍手しても上げている花火師さんには届かないのだけど、それでも職人の技を讃える空気になる。美しい花火自体も好きだけど、私はそういう祭りの雰囲気が好きなのかもしれない。