映画:グリーン・ゾーン(監督:ポール・グリーングラス)

ブッシュ大統領イラク北朝鮮などを名指しで『悪の枢軸』と非難し、強引にイラクへ侵攻した第2次湾岸戦争大量破壊兵器保有しているのに隠しているというのがその理由だったが、結局兵器は見つからなかった。その陰には様々な陰謀があるとまことしやかに囁かれている。
大量破壊兵器を探索する任務に当たるミラー准将が、地元の愛国者の情報提供によって事態を打開する証人を得るが、自軍と自国政府によってその手掛かりは奪われてしまう。不審に思ったミラーが更に調べてみると、という緊迫したお話で非常に面白かった。これが事実かどうか、それは判らない。こうした実際に起きた事件や戦争について描くには、細部まで真実であることは必要ではないのだな。確かにあの戦争にはなにかしら解せない経緯があり、白日の元に出てこなかった事実がありそうだった。私も当時そう思ったし、そうした噂も多かった。
あれはアメリカの勇み足ではなかったのか? 自国でこうした映画が次々と作られ、観客を集めていくというのは、自浄作用として凄さまじいものがある。検証と自省、実際のところどうだったのよ。何のために人々は死んだのか。そりゃ昔から支配者の気紛れで被支配者の生命が左右されるというのは珍しくもない。だが、民主主義ではそれではマズイのだ。
そして相手はアメリカ式の民主主義が通じない文化を持っている国である。自らの理想を他国の文化を無視して強引にぶつけた結果、相手国はめちゃめちゃになってしまう。
理想と腐敗。自分と他者。
対立と背反が複雑に絡み合い、とんでもない事態を引き起こしていく。


という具合に大変面白い映画だったのだが、これを観た当日、私は映画を楽しむどころではなかったんである。