中国革命同盟会発足当時のエピソード、ということになるのだろうな。このへんの出来事にはちと暗いので、なんとなーくの流れしか判らない状態で映画をみたのだった。孫文がこのキナ臭い時期に香港へ渡航した事実があるのかどうかも知らない。近代中国の革命家は親日派が多かったというか、日本が中国の革命家を支援するような機運が高まっていたというのか、孫文にしろ黄興にしろ一時期日本に住んでいたり日本の大学で教育を受けた人々は多いんだよなー、わりと仲良しだったんだよなー、というくらいの漠然としたイメージである。日露戦争で勝ったから、アジアで日本の地位が向上していたあたりですな。
そんな背景はともかく、映画の系譜としては香港カンフー映画というよりは、三国志や水滸伝あたりの中華ドラマに近い。時間を持て余していた失業時代に図書館で借りて腐るほど観たが、中国のアクションドラマには独特の雰囲気があるのだよな。
守るべき大儀があり、忠義の漢たちと妓たちがいるわけだが、大きな物語の前にたくさんいる登場人物のひとりひとりを一個人として清濁合わせて描いておく。そうすると見ている側は全員が『知っている人』になるので、最後の戦闘でバタバタと人が死ぬ場面ではより一層の悲壮感が生まれるんである。いつでも死ぬのは名もないサイボーグではなく、親も子もある血の通った人間であることを忘れない。そういうキメ細かさがある。
ところで犬は人につき、猫は家につくと言う。日本で『義』といえば大将や上役など人についていくことだが、中国での『義』は理想に対する忠義立てなんである。日本で下手にこうしたドラマを作ると本末転倒で目的が矮小化され誰かのためにうんちゃらかんちゃらとベタベタのグズグズになりがちだけども、中国モノだと協闘はするものの基本的にはそれぞれが勝手な理由でてんでんばらばらな思惑の上で理想に燃えているわけで、誰かを守って死ぬにしても、ひいては自分の理想のためという立ち位置が揺らがずそれほどウェットにならない傾向がある。もっともそうクッキリハッキリ線引きできるもんでもないので、ひいてみればアジア特有のウェットさの濃淡なんだろうな。
感想文を書いているつもりでさっぱり感想に辿り着かないが、とにかくそんな感じで久しぶりにアクションであり勧善懲悪であり人間ドラマでもある中国っぽいものを観て楽しかった。なんだか判らないけど飯を喰いながらわいわいと盛り上がるプリミティブな感じも、とても中国っぽくてよかったよ。
当時の香港のセットも凄かったな! 港の風景や路地など、美術も見ごたえがある。この勢いで九龍も見たいなぁ、誰かセットで再現して映画撮ってくれないかなぁ。