おににに

私の作るおにぎりは大きい。全面をがばっと半切りの海苔で巻いた様は堂々として「おにぎり」というよりイメージ的には「握り飯」といった風情である。それを見る人は一様に、
大きいね。
と素直な感想を漏らす。私はそれに対していつもこう答える。
うむ。ふたつに分けるのが面倒だから、ひとつにまとめて握っているのだ。
ああー。
そうすると具の梅干もひとつで済む。
いや、そりゃそうだけど、そういう問題なの?
だいたいこうした会話になる。
ところで先週くらいから残業中におにぎりを食べるようにしている。このところのコンスタントな残業で毎日の帰宅到達時刻は22〜23時。帰ってから食事をしていたら、そのあとあまり時間をおかずに横になるせいか食道が焼けるようで、から咳が出るようになってしまったんである。食べてすぐ寝ると牛になるとよくいうが、どちらかというとホエザルである。ゲホゴホ。
そうでなくとも深夜にガッツリ食べるなんてのは、身体にいいわけがない。もう無理のきかないお年頃なので、せめてまともな時間におにぎりくらい口に入れておこうという、殊勝なことを考えた次第である。米さえ喰ってればなんとかなる。
そこで先週は出勤時にコンビニへ寄って、夜の分のおにぎりを買い込んでいたのだが、ふとあることに気付いてしまったんである。
ウチには米がたくさんある。
せっかく田舎から新米を送ってくれたのに、なかなかいまある米を消費しきれず、美味しいお米に辿り着けないほどである。朝はコンビニで適当なパンなどを口に入れ、昼は仕出し弁当、これで夜もコンビニのおにぎりとなったら、どう頑張っても米の在庫は減らない。それに、なにも自宅にたくさんあるものを外で買わんでもいいじゃないか。炊いてさえおけば朝の苦手な私でも握るくらいは可能なんじゃないか。
そう思い至った私はさっそく今日から特製の握り飯を携え、出勤したのである。握った米で鞄が重い。さて、電車を降りたら朝ごはんを買いにコンビニへ‥‥なんか違和感がある。何故私は握り飯を持ってさらに食糧を買い込もうとしているのだろう。
なにか腑に落ちないものを感じながら店へ入ると、なんと今日はおにぎり全品100円デーだという。いつもは朝はパンだが、これはおにぎりを買わねばなるまい。
‥‥‥。
なにかおかしい。どうして私は握り飯を仕込みながら、おにぎりを買っているんだろう‥‥。