修羅場に突入する前に読み終わってまだ感想を書いていない本が何冊かある。半年も前なので読み終えたときの気持ちが思い出せない。気持ちがないと勢いもない。しかし何故か自分が読んだ順番通りに記録しないと気持ち悪い。そうして感想を書きそびれていたのだが、老人と宇宙シリーズの最新刊が最近出たのでそれを読んで気持ちを新たにし、それまでの分もまとめてしまって感想渋滞を解消するのである。
老人と宇宙はジョン・スコルジーの人気シリーズで、だいぶ前に話題になった。そのときに面白そうだなと気になりつつ後回しにしていたのだが、最初のシリーズが完結した時点で熊が買ったのを貸してもらって一気読みしたのだった。読んでみれば人気が出るのもむべなるかな、わくわくしながらページを繰る手が止まらない屈託のないスペオペの王道である。こういうストレートなSFを久しぶりに読んだ気がする。奇妙な話や捻りの効いたのもいいのだけど、やっぱりスペオペはいいものだ。新作なのにキホンはコレよねという安心感すら漂う。
しかし奇を衒わないというとスペオペ自体が荒唐無稽な活劇なのにおかしな話ではある。この物語では老人が緑色に変身する処置を受けて宇宙での戦闘行為に志願するのだ。充分おかしい。しかしふとハルクとかグリーンジャイアントとか強いモンスターは緑色なのがアメリカの伝統なのだろうかと思ったりもする。そうして緑色になったあとも、痛快なほど身体能力はアップしているし、中身も訓練のせいかだいぶタフなマッチョ寄りにはなっているけども、人間としてはかなり真っ当なんである。たぶんぶっ飛んだ設定と慣れ親しんだモチーフのバランスが絶妙なんだろう。厭なヤツはさっさと死んで味方は運よく生き残るという、読む側の期待を裏切らない展開も用意されていて、カタルシスを邪魔しない。スカッとさわやかな冒険活劇である。
最初のシリーズは3部作+スピンオフ1冊で、5巻目から主人公と舞台を変えて新しいシリーズが始まっている。
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