映画:おじいちゃんの里帰り(監督:ヤセミン・サムデレリ)

おじいちゃんがトルコから労働力としてドイツへやってきたのは1960年代。最初は単身赴任の出稼ぎだったが、やがて妻と4人の子供を連れて本格的に移り住むことにしたのだった。そうして時は流れて4半世紀、異国での生活にもすっかり馴れ、子供たちはみなドイツで結婚し“ドイツ製”の孫もたくさんできた。そんなある日、おじいちゃんが急にトルコへ帰るといいだした。しかも家族全員で。そんなお話である。
監督自身がトルコ系ドイツ人で、実妹とともに脚本を執筆したのだという。そのせいか文化の違いでショックを受ける部分やそれに纏わる冗談などがとても細やかに描かれていて面白かった。磔のキリスト像がホラーだとか、言われてみればそうかもしれないとニヤリとしてしまった。しかもそれがドイツへ来たときはああだったけど、トルコへの帰り道ではこう、という時代が移りかわりつつの往復なので2度楽しい。
ドイツが労働移民を受け入れ戦後復興を果たしたこと、やがて景気が落ち着いてからはそれが一部で軋轢を引き起こしていることなどは漠然と聞いたことがあったが、トルコからの移民が一番多かったというのは初めて知ったな。お国事情というのはいろいろあるものである。異文化の中で暮らしてみればネオナチとまではいかなくともいろんなご苦労があったのだろうけど、映画ではそこらへんはさらっと流して、あくまでユーモラスに描いている。あの最後の家のシーンは味わい深くてよかったな。