映画:ザ・イースト(監督:ザル・バトマングリッジ)


非常にセンシティブなのだね。『絶対の正義などない』はトレンドなのだろうな。
社会テロ組織といえば仰々しいが、その中身は生き難そうな若者同士が集まったヒッピーの末裔であり、個人の感情と世界を一直線に繋いで『感じて』しまうような幼稚な集団である。昔と違うのは、総人口70億を超した世界の現状は若造がどれだけ暴れても一筋の傷すらつけることなどできないと自覚しているうら寂しさか。それでも出来ることからコツコツとやろうとする生真面目さ。
テロを事前に報告しても「その標的は顧客じゃない」と切り捨てるよう指示されたシーンは一見して商業主義の悪辣さのように見えるけども、これが事前といっても10分前くらいなもんである。いくらやり手で頼れる上司でも、そんなもんをどうにかしてくれと泣きつかれても出来ることと出来ないことがある。結局は準備期間を確保できなかった自らの力不足に帰結してしまうところを、そのように気をそらしてくれたのだともいえる。
最後のほうで上司の目の前でゴミ箱を漁ってみせるところは、自分でも上司の目にどう見えているのか判っていて止められないというのがよく出ていて、とても敵わない相手を敵に回す瞬間のどうしようもなさは見ていて胸がキリキリする。精神的な独り立ちの瞬間でもある。
闘いを選ぶのか、何のために闘うのか、そのために何が必要か。大きな物語に仮託して思考停止することもできず、いまさら個人の無力さに暗黒面に墜ちることもできない。現代のスパイ映画は繊細にならざるを得ない。