読了:馬と少年(C.S.ルイス)

馬と少年―ナルニア国ものがたり〈5〉 (岩波少年文庫)

馬と少年―ナルニア国ものがたり〈5〉 (岩波少年文庫)

ナルニア五巻目。「ライオンと魔女」でナルニアに行った子どもたちが、王・王女である時期のお話。
貧しい猟師の息子のシャスタが、継父に奴隷として売られそうになり、ものいう馬ブリーと連れ立って、ナルニアに向けて逃げ出す。途中、厭な結婚を嫌って家出中のお嬢様アラビスと、これまたものいう馬フインと出会って、一緒に旅をすることになる。
今までで一番、教訓的で象徴学的だったかもしれません。合戦から後ろの流れなどは、ご都合主義というか、あざとさまで感じてしまった。道理で、子どもの頃に全部読んだはずのに、この巻は記憶に残ってないわけだな。
お話として面白くないのではないのです。そもそもこれは児童書なので、大人が読んで文句なしに面白いというわけにはいかないでしょう。それは全巻に通じていえることで、最初から子ども向けだと知って読んでいるのだから、文句を言っても始まりませんな。とにかく型からはみ出さないので、お話の基本を学ぶには良いかもしれません。
ところでこのシリーズ、食事のシーンがよく出てくるのですが、ここで食べられている肉が気になります。ナルニア国には喋る動物がいて人間と同等に扱われており、彼らを殺したり食べたりするのは恐ろしい禁忌なのですね(「銀のいす (カラー版 ナルニア国物語 4)」でそのシーンが出てきました)。他のものを言わない「バカな動物」とは差別されている。喋ることができるか否かは、種が違うような描き方ですが、それでいいんでしょうか。
動物愛護を判りやすく表現するために、もし喋ったりしたら苛めたり殺したりできないでしょ、というわけではなく、逆に人間を動物に見立てているのかな。でもそうすると、人間と動物の差異は喋るか喋らないかしかなくなるわけで、じゃあ喋らなければ食べても良いのものなのかぁ?
なんかスッキリしない。小人さんが炒めてる卵は、何の卵? ベーコンがでてくるけど、これは喋らない豚を喋る動物が飼っていて、それを食べている? うぅん?