ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島(監督:マイケル・アプテッド)


ナルニアである。通っていた小学校の図書室にハードカバーで全巻揃っていて、並んだ背表紙の『銀のいす』や『さいごの戦い』というロマン溢れるタイトルに惹かれて手に取ったのが最初の出会いだった。確か『さいごの戦い』の背表紙にはユニコーンの絵がついていた気がする。当時はいまよりも生真面目な性格だったので、最終巻のユニコーンの絵を目標にちゃんとシリーズの1冊目から順繰りに読破していった。キリスト教的な世界観が判り難くて、何度か読み返したような気がする。
ナルニアは荒唐無稽な冒険譚のようでいて妙に世知辛いのだよな。素朴な克己の精神が全編を貫き、登場人物たちは羽目を外そうとするたびにひどい目に遭う。ナルニア国という別世界に行ってまで、西洋キリスト教文化がガチガチに適用されどこまでも逸脱しないつくりになっていて、今にして思えば人智を超えた存在や異文化が伸びやかに入り乱れる指輪物語などと比べると、ある意味小さくまとまっているともいえる。
この本でもって小学校低学年のうちから西洋的なものの考え方に触れ、『アメリカは文化が違う』(当時の私にとって外国=アメリカだった)とはっきり認識できたことは、長じていまでも読書や映画鑑賞の役に立っている気がする。
第一次世界大戦の頃に子どもたちが活躍する物語である。戦争の影がそこここにちらつき、両親は忙しく子どもたちだけで疎開したり、親戚に預けられたり、なんとなく子どもには厳しいご時勢なのだった。そんな中で子どもが空想に遊ぶような、ちょっと寂しく儚い物語群なのだ。


なんて紹介しているが、実のところナルニアシリーズの映画では1作目も2作目も見ていない。何故かというと、ナルニアというのは教条的かつ子ども向けの捻りのない勧善懲悪のお話であり、さらにライオンが出てくれば無敵の魔法でなんでもどうにかなってしまうというファンタジーの禁じ手を使ってくるんだよな。だから大人が見て面白いかというと、なあ、なんだ、その、アレなわけだ。それでいて3作目だけは見に行ったのは、リーピチープ一点買いだからである。

朝びらき丸東の海へ―ナルニア国ものがたり〈3〉 (岩波少年文庫)

朝びらき丸東の海へ―ナルニア国ものがたり〈3〉 (岩波少年文庫)