暑い季節になったので、手弁当を持参できない。何故なら、私は前の晩に作るから。
生まれたときから朝は苦手だ。赤ん坊の頃にはすでにその兆候があって、他の子なら目覚めて泣き始める時間帯になっても、私はまだスヤスヤ眠っていたらしい。それから一時間ぐらいたって、出勤する父を送り出して一息ついた頃にやおら目を覚ますので、非常に重宝したと母が言っていた。親孝行な赤ん坊だ。
今まで幾度となく起床してから出掛けるまでに時間を作り、食事をし何かしら作業しようと努力したものだが、その度に失敗した。小学生の頃にその日の時間割に従い、教科書を揃えてランドセルに入れることすらできなかった。
苦節三十余年、もう諦めた。私の辞書には朝に何かするという文字はない。起きてすぐ出掛ける。まともに化粧をする時間もない。だから弁当作りは所要時間十分であっても、前の晩のうちにやっておくのだ。
そういうわけで一年のうち、食中毒が心配な三ヶ月ほどは弁当を作れない。私が作る弁当は鳥の餌のようだが、それはそれで色んな野菜を入れるようにしている。買い食いするとそれがないのがツライ。ああ、野菜が食べたい‥‥。
