落着

実は先月、同居人のことが実家にバレたのだ。
実家は同じ市内にある。家庭菜園で採れた野菜を時々貰うのだが、ある日前触れもなしにその野菜を持って母がやってきたのが事の始まりだった。
ま、こんな状態で何年も一緒に暮らしていて、よく今までバレなかったなというぐらいで、いつか起こるべくして起こった事件だったのだ。しかし私のほうはともかく、実家では両親共に相当ショックだったらしい。超がつくほど保守的な家庭なのだから、無理もない。
でまぁ、いろいろすったもんだあり、初めのうちは両親も「別れろ別れろ」の一点張りだった。だから今回の呼び出しでもかなりやられるだろうな、と私は悲壮な覚悟で望んだのだが、周りからやいのやいの言われてもどうしようもないことってのはある。どうしてもダメだというなら、駆け落ちでもするか、ぐらいの気持ちでいたのだ。
両親としては不安なことは悪いほうへ悪いほうへ想像してしまうらしく、同居人が根っからのワルで寄生虫のように私に取り付いているんじゃないかとか、貢がせておいて自分は遊び呆けているんじゃないかとか、暴力で支配されているんじゃないかとか、恥ずかしい写真を撮られて脅迫されているんじゃないかとか、そういう心配をしていたようだ。確かに条件だけ聞いたら、タチの悪いホスト崩れなんじゃないかとも勘繰れるのが哀しいところだが、実態はお小遣いの類は私の稼ぎが悪いので渡せていないし、人から梅の実を貰えば梅酒を漬け、栗を貰えば自分で皮をむいて栗ご飯を作るような男なのだった。
小心者の癖に妙に頑固な私がこれだけは譲れないと頑なに貝になっているのを見るにつけ、こうなったらコイツはテコでも動かないということをさすがに親だけあって知っていて、更に追い詰めると破れかぶれに何をしでかすか判らないと逆に不安になったらしい。
最終的には同棲するのも賛成はしないが黙認する、そういう男と一緒になると苦労するぞ、できればふたりで働いて入籍もしてまっとうに生きて欲しい、というようなことを言われて終わった。
帰りに車で送ってもらう道すがらも、住所はちゃんと知らせろとか、もし電話番号が変わったらちゃんと知らせろとか、とにかく行方不明になるなと念を押された。
ははは、私はそんなに判りやすい顔をしていたのかね。バレバレだよ。
なんだかんだ言って、親には敵わねぇな、チクショウ。