知らぬが仏

困ったなぁ。
私は一方的に実家と折り合いが悪い。
いろいろ話を通しておかなくちゃならないことがあるのだが、まともに実家のことを考えると、ダメだ、血の気がひく。貧血で気持ち悪くなる。
私が若い頃に鬱病に罹ったことは両親も知ってはいるが、その原因については薄々しか判っていないはずだ。それから十年も経って、実の娘が自分たちの存在に未だにこんな反応を示すと知ったら、両親は傷つくだろう。ふたりとも別に根が悪いわけではないのだ。真面目なのがとりえのそこら辺にいくらでもいるような人たちだ。
そんな老い先短い人たちを徒に苦しめたいわけではない。だからこのことは死ぬまで告白しないでおこうと思う。
それにしても私もしつこいなぁ。もう脊髄反射みたいなもんでコントロールは効かないのだけど、どうしても両親を許せないらしい。この世から消えてなくならない限り、私の精神に安寧は訪れないのだろうな。不幸な関係だ。
日頃からなるべく関わりを持たないようにしているのだけど、たまに実家に顔を出したときなど、戻ってきて老後の面倒をみてくれと頼まれたりすると、思わず虫唾が走る。
ああ、こんな娘でごめんなさい。