鼻曲がる

匂いというのは、そもそも情報なんである。食べても安全か、危険な天敵の匂いはしないか、空気に雨が降りそうな匂いが混じっていないか。
体臭は個人を特定する情報だ。子どもは乳臭いし、齢をとればそれなりの加齢臭がして当たり前である。病気になれば独特の匂いがしてくる。恋愛状態でもぞっこんラブラブの時期には落ち着く好い匂いだと感じていた相手の体臭が、気持ちが冷めてくるとその臭気に耐えがたくなってくるというのは、よくある話だ。同じ匂いでも情報の意味によって、受け取る側の分析結果は左右されるのだ。
体臭に人工的な香りを上乗せしたことによって、他人からの好印象も上乗せされるとしたら、大概は最初から割と好かれていたんじゃないかと思う。匂い単体ではどんなに素敵に爽やかなものでも、嫌いな人と関連付けられたら最後、反吐が出そうな悪臭でしかなくなる。
逆もまた真なり、好かれる匂いを発して好意を勝ち取ろうという理屈も判らないではないが、それには匂いがヒトに及ぼす科学を熟知していて、無限にある配合の妙も知り尽くしていて、状況に応じて臨機応変に違う匂いを発しなくちゃいけない。そこんじょそこらのプロにとっても難易度はかなり高いのではないか。
そもそも自分の匂いをぷんぷんさせているということは、物凄い勢いで自己主張しているのと同じことである。部屋に入ってくるだけで姿が見えなくてもその人の存在を無理矢理周囲に認知させたりすれば、その押し付けがましさだけで相手をうんざりさせるには充分だ。それで歓ぶのは、その人がそこにいるだけで嬉しがるような崇拝者だけだろう。


だからさぁ、つまりさぁ‥‥鼻も閉じたいときに閉じられればいいのになぁ‥‥。

コメント欄より

id:yukioinoさんが本当に下の句を歌ってくださいました。
http://d.hatena.ne.jp/yukioino/20070509
悪ノリにお付き合いいただき、多謝。
これが双方向、次代のweb2.0?(違) 楽しいかも。