映画:落下の王国(監督:ターセム)

映像美を目指す途上の映画。デザイン的で判りやすく綺麗な画面には、どこかで見たことがあるようなものが次々に出てくる。
二十世紀初頭くらいの「現在」で語られる「御伽噺」という入れ子形式になっている。進むに連れて「現在」が「御伽噺」をどんどん侵食していくのだが、しかしその「現在」のストーリーが陳腐でそこに収束しちゃうと話がどんどん矮小化していってしまうのであった。逆なら面白いけどなー。
コラージュという手法もあることだし、文字通り完全にオリジナルなものなどこの世にはないわけで、創造されるものは必ず何かしらの影響を受け焼き直したものではある。切り貼りで奇抜に美しいものを見せるなら見せると徹底してくれたほうが、ケンタッキー・フライド・ムービーの現代美術版だと思えばいいので、象が都合よく海を泳いでいても笑って済ませることが出来たかも。
しかし、ストーリーテラー役のおにーちゃん、自分がくだらない理由で小さい子を騙して怪我させたくせに、その直後に語って聞かせる物語の中で『お前のせいでひとり死んだ』っちゅー展開にしちゃうのは如何なものか。ヘタレにもほどがある。そこだけはどうしても気に喰わん。
だけど最後のオレンジ畑と白黒のカットはけっこうほのぼのしてて、にっこり笑って見終えることが出来たよ。