ロケ地:ジュテーム星

「あなたがそうする理由は何?」
女はベッドの上で半身を起こしたまま、物憂げに訊いた。
「あなたがそうすることはあなた自身が決めたことでしょう? でも、そう決めるまでにはなにか理由があるはずよ。それを考えてみて」
「何故、僕にそれを答えさせようとするんだい」
男は下着を身につけながら言った。
「僕がそうすることに意味なんてないのさ」
「だけど、あなたはそう『しない』ことじゃなく『する』ことを選んだんだわ。たとえちっぽけで取るに足らないことだとしても、あなたにそうさせるきっかけがあったはずよ。目が覚めたときはまっさらだったあなたにそうさせたもの。それは今朝覗いた鏡の中に映った猫の模様のせいかもしれないし、マルセルで食べたプリッツが硬かったせいかもしれない」
女は顔を伏せてくすくす笑った。男はそのそばに腰を下ろし、彼女の髪にキスした。
「そうだね。でも僕が一番僕らしいのは君のために奉仕しているときさ」
「そんなのって信じられないわ」
女はおののくように言った。
「だけど信じなくちゃいけない。僕がこうしようと思うのは、自分のためじゃない。僕には自由意志なんかないんだ」
「駄目よ。そんなの無意味だわ」
「無意味だったのは僕の人生になにか起きる前さ。僕はなんの意義も意味も持たずに生まれてきた。君の言うとおりまっさらだったのさ」
男はみんな同じことを言う。女は怯えて男に背を向けた。決まりきった手順、決まりきった会話。きっといつかこのひとも、他の男たちと同じように勝手に傷ついて離れていくのだ。そんな茶番には堪えられない。女は裸の肩を震わせた。
男は驚いて女を抱き寄せようとしたが、女はするりと身をかわした。
「どうしたんだい」
「そんなもの無意味よ」
女の指摘にうろたえた男は、頭に生えたT字型の触覚に手をやった。


アコムのCM、チャント星人シリーズでドライブしている宇宙人男女がフランス語(?)で会話してるのがあったと思うのだが、動画を探しきれなかった‥‥そういうノリでやってみたかったのだ。

らららむじんくん