- 作者: レイ・ブラッドベリ,小笠原豊樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/03/14
- メディア: 文庫
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人類は火星へ火星へと寄せ波のように押しよせ、やがて地球人の村ができ、町ができ、哀れな火星人たちは、その廃墟からしだいに姿を消していった……。精神を欠いた物質文明の発達に厳しい批判を浴びせる、ポエジイとモラルの作家が、二十六篇のオムニバス短篇で謳いあげた、SF文学史上に輝く永遠の記念塔!
最初のほうの火星人の生活を描いた場面で、たむらしげるのファンタスマゴリアが浮かんで仕方なかった。
具体的に何が似てるというわけではなく、ブラッドベリの文章を読んだらなんとなく脳内でたむらしげるの絵で再生されたのだ。大量の青く燃える鳥がリボンを咥えて船を運ぶとか、夜になると花が萎むように小さく縮む家だとか、砂漠の中にポツンと建っているような静的で詩的なイメージが繋がったんだろう。
そこへやってくるのが実写版の地球人たちだ。厭でもガサガサして粗雑で無神経な荒くれ者に見える。しかし火星人の意図的な反発が始まる第三探検隊のあたりから、だんだん地球人もファンタジーの世界に取り込まれていくようだった。
無関係なオムニバスのようで少しずつ関連性のある短い話が積み重なり、火星は地球人に侵食されていく。美しく繊細な火星人の姿がどんどん少なくなっていくのが切ないのだけど、絶滅種ってこういうことなんだなぁ。最後に我々が火星人だよ、で冒頭にループ‥‥というのは解釈が甘すぎだろうな。
ブラッドベリは若い頃に二、三冊読んだけど、実は私はあまり嵌らなかったのだ。しかしいま読むと素直に『好いなぁ』と思う。先月実家に帰ったときに何冊かサルベージしてきたので、他のも再読してみよう。
こっちのほうがイメージかな。クジラの跳躍。