読了:世界の測量 ガウスとフンボルトの物語(ダニエル・ケールマン)

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語

知の歴史に偉大な足跡を残した天才、ガウスフンボルトを主人公とした哲学的冒険小説。ドイツ文学では『ブリキの太鼓』『香水』と並び賞される傑作、待望の邦訳。ドイツ国内では130週にわたりベストセラーリストに名を刻み、120万部の売上を記録。世界45か国で出版。

ついったーで話題になっていたのが面白そうだったので、積読本に割り込ませて読んでみたら、これが滅法面白かった。
ガウスとはガウシアン関数やらガウスの定理やらガウスの法則で有名なあのガウスである。電磁気の単位である『ガウス』も彼にちなんだ呼称だ。フンボルトとは大航海時代の最後のほうで南米に渡り大冒険したあの近代地理学の祖である。ベルリン大学創始者のヴィルヘルムの弟でもある。
脇役としてシラー、ゲーテ、クック船長と旅したフォルスター、シモン・バリボル等々、同時代の知の巨人たちがいれかわりたちかわり登場してきて、次々と通り過ぎていくのが圧巻である。あまりの豪華さにそれだけで鼻血が出そうであった。
内容はふたりの科学者に焦点をあて、その業績や偉業を物語にしたものである。綺羅星の如く輝く天才たちがそれぞれ肉付けされ戯画化されていて、知っている名が出てくるたびににやりとし唖然と口が開いてしまう。通勤電車で読んでいたので周りからは奇異な目で見られたやもしれんが、そんなことはまったく気にならないほど愉悦に満ちた読書であった。ふたりとも人並みはずれた頭脳を持ち、それゆえの奇矯さも少なからず発揮しているのだが、このへんも少しでも理系の素養があれば共感できることは間違いないであろう。とはいえこれは伝記ではなく物語であり、必ずしもすべて史実と一致する内容ではないという。それだけにちらっと出てくるゲーテなどが、あまりにそれらしくて楽しい。
これは笑いながら強くオススメする。特に理系で研究者で冒険者で突き詰める癖のあるアナタに。