映画:ビッチ・スラップ(監督:リック・ジェイコブソン)


三人の登場シーンからしてまずはだけた胸元をバーン! とアップしてから顔を写すというおバカ徹底ぶりである。盛り上がるチチ! 突き出されるケツ! 砂にまみれる女体! あとキャッキャウフフ水の掛け合いと唐突な百合プレイと鼻血たらしながらのキャットファイトと煤と硝煙に汚れていくナイスバディ! 潔いほどそれだけの映画である。観てるほうが鼻血ブーだわ。観る前はド素人同然のよちよちアクションだったらどうしようかと心配だったんだが、すいません、それは女優さんに失礼だった。考えてみればああいう人たちはダンスのレッスンなんかもみっちりやってるんだよな。18cmくらいありそうなハイヒールできっちりステップ踏んでくる。
エロというのはどこまで過激になれるかを競うと共に、いき過ぎて好みの範囲を逸脱すると一気に気持ち悪くなってしまうという、白刃の上を渡るようなギリギリの匙加減が難しいものである。個人の好みの問題でもあるので一概に言えないのがまた事態をややこしくする。私からするとボン・キュッ・ボン!のキレイな女体は見ていて楽しいけども、リアルを追求しすぎて生々しく肌色がざらざらしていたり毛穴のポツポツが見えるほど鮮明な部分アップになるとエグいと感じる。またスカトロや陵辱・他人の自慰は興味ないし、できれば見聞きしたくない汚いものの部類に入る。うっかり道具のレビューなんか見てしまった日にはげっそりするんだが、それもこれもガチ18禁でもない限り好みの問題であろうし止めてくださいと言える筋でもなし、ひとりで顔に縦線を浮かべて用心し回避するだけの損である。
その点、この映画はバカさ加減と明るいエロとファイトがいい感じに突っ走っていて、イイネイイネー! と手をたたきながら見ることの出来る安心設計であった。バカさ加減といえば海外ドラマ『アンドロメダ』で艦長のディラン・ハント役をやっていたケヴィン・ソルボが、おバカな役で出てきたのに噴いた。
ところでこの映画がはじまる少し前に観客がロビーにたむろしていたときのこと、すぐそばのお若いカップルの会話が聞くともなしに聞こえてきたんである。胸元にリボンのついたジョーゼットのワンピースで背筋がピンと伸びたお嬢さんは、どうやら『かっこいい女性三人がかっこよく闘うアクション映画』だと思って観に来ていたらしい。ちょっとハードなチャーリーズ・エンジェルくらいなイメージだろうか。大筋に間違いはないようで大違いのような気がしたのだが、お連れの紳士は事情とご自分の置かれた状況をよく判っておられたらしく、血とか身体がもげるとか苦手なの、という彼女の言葉に非常に歯切れの悪い相槌を打っていたのが印象的であった。彼らのその後に幸多かれと祈るばかりである。