ざわざわ

そろそろ背中が限界である。痛い部分の真ん中あたりは触ってももう感覚がない。痛みを感じてるのはその周囲なのだよな。これを一気に温めてほぐしたりすると、感覚が戻ってきて痛みも蘇る。ネット的に形容するなら『ぐはぁっ!(血反吐)』である。単純に痛いというより、厭な感じに冷たく痛苦しいのだ。フロドが受けた呪いの剣の傷もかくやである。でも血行を良くしないとコリも治らない。痛いの厭だけどここを我慢しないとずっと痛いままだ。ハードボイルドなら肩に残った銃弾を取り除かないと腕が壊死してしまうから、スコッチをブーッと噴いて火で焙ったナイフでほじくり出し、歴史スペクタクルなら脇腹に刺さった返しのついた矢を力づくで引き抜くところ、私の場合は温泉にでも浸かってゆっくりあったまり、マッサージに行って揉んでもらい、更に岩盤浴などで芯から温め、ジェットバスみたいなものでブロウされなければならないわけである。すべて痛みが伴うのでこの間は眉間に皺が寄ったままである。・・・・ここまでぽわわんと夢想したが、とりあえず今日も平常運転絶賛就業中ついでに残業も通常通りだよ! である。
よく考えたら修羅場が終わったばかりだったんだよな。弊社は規模の大きな現場をこなすと関わった人間は交代でリフレッシュ休暇という名の有給消化に入る慣例になっているのだが、その相談をしていた矢先に地震が起きてしまった。隣の席の後輩などはこないだの週末から昨日まで休みということになっていて、地震後の片付けや通勤不能などもあったのでちょうどいいっちゃちょうどよかったけど、なんか物凄く損した気分だとブツブツ言っている。1年生から休ませにゃなるまいと気を利かせたのが仇になったようだ。しかしこちらはこうなるといつ休みを取っていいものか、休暇自体が霧散してしまいそうな不安に苛まれているのである。そもそも休みとって帰省するつもりだったけど、いまは無理だなぁ。


私がいまいるところではあれから毎日余震に脅え、テレビをつければ凄惨な場面ばかり、ネットを見れば原発の危機。判らないのも不安だし、いいニュースを求めてついずっと見てしまうけど、そうそうスカッとする出来事はない。買い物に行けば買い占められてガランとした棚、ガソリンスタンドには長蛇の列。もう少しでマッドマックスになれそうな光景の中、それでも仕事には行かねばならず、電車は以前のようには動かず、やっと家に帰っても節電や計画停電。でも、もっと大変な目に遭ってる人たちがたくさんいる。首都圏の、少なくとも南半分は被災地とはいえないのだ。そう思うとなにも言えない。踏ん張るしかない。そんなこんなでだいぶ人心がささくれ立ってきている気がする。もちろん私も含めてだが、他人に対するキャパが狭まってきて、他人の発言を『不謹慎だ』と責める風潮もそのうちのひとつなんだろう。
そろそろ最初の興奮が収まってきて、勢いのついた気持ちが行き場を失う。うまくガス抜きしないと潰れてしまう。
友人知人のうち何人が助かって何人に連絡がつかなくて・・・・という状況がそもそもおかしい。天災に文句を言うのも虚しいが、なんなんだこれは、戦時下か。首都圏に降る微量な放射線などこの際どうでもいいわ。


それでなんなのかというと、私自身が
そ ろ そ ろ 休 み た い で す 。