諸行無常

職場で不幸があったため忙殺されておった。死ぬにはまだ早い上にピンピンコロリの見本のようなあっけない人生の幕引きにしばし呆然としたものの、感慨に耽っている暇はあまりなかった。同僚であったし入社時にいろいろと世話になった義理もある。会葬の裏方から仕事の引き継ぎ・片づけなど手伝おうとすればやることはいくらでもあった。そうして西へ東へてんてこ舞いしていたらば、通夜と葬式の間の朝方に夢に故人が登場してきたので、すかさず塩を撒いて退治てしまったのだった。もしかしたら最後のお別れに出てきたのやもしれぬし、はたまた礼を述べに来たかもしれぬのにと目が覚めたあとから頭を抱えたのだが、追い払ってしまったものは仕方ない。成仏召されよ。いやあと1か月くらいは現世うろうろ期間だけども。
2月は逃げるというけども、そんなこんなで1週間ほど吹っ飛んだので本当に短い。もうちょっと真面目に更新しようと密かに決意を新たにしていた日記も、このひと月に10回も更新しないうちにもう終わってしまう。仕事のほうも段取りが後手に回って土日にちょっと出勤せねばならなくなった。無念である。
世の中に対する個人の恨み辛みはいろいろあれど、なんにしろ死んじまったらお終いだよな、と厳然として動かしがたい虚無感に包まれる。先も知れてるしなーなどと腑抜けたことを思いつつ、好奇心から厚生労働省の平均余命をぐぐってみたら、まだあと半分残っていることに気が付いて逆に呆然とした。これからこれまでと同じくらい生きるのか。そりゃけっこうあるな。齢をとってからのほうが体感は短いだろうし、あくまでも平均値だから明日死ぬかもしれないけど、それはそれとして思いのほか長い。それだけあったらあとひと花くらい咲かせることを目指してもバチは当たらないかもしれない。この世の無常と不条理に触れて厭世観に苛まれていたはずが、いつの間にか妙なハイテンション・ポジティブ・シンキングになっていた。そんなもんである。


厚生労働省−主な年齢の平均余命